これを読んでいらっしゃる方の中には、本当にフォトフェイシャルがご自分にも効果があるのか、気になる方も多いと思います。
実は、フォトフェイシャルはシミ・小ジワ・ニキビ・赤み・毛穴など様々な皮膚のトラブルに対して効果の期待できる施術ですが、過大な効果ではなく、効果については多少ばらつきがあります。また、効果を出すためにはいくつかの注意点もあります。
ここでは、お読みいただいている方それぞれにとって、どれだけの効果が得られるのかを把握いただくことを目指し、症状別の事例写真、他の治療法との効果の違いをご紹介します。
この記事をお読みいただくことで、フォトフェイシャルの効果を正しく理解し、実施するかどうかの正しい判断の参考にしていただければ幸いです。
なお、フォトフェイシャルとはどんなメカニズムでどのような副作用があるのか、全体的なことは、
「フォトフェイシャルって効果あるの?機械の種類と正しい選び方」および
「医師が解説!フォトフェイシャルを受ける前に知っておくべき5つの副作用とその対策」でご紹介いたしました。よろしければご覧ください。
1. フォトフェイシャルの効果
フォトフェイシャルは光治療とも呼ばれます。
IPL(インテルス・パルス・ライト)という特殊な光を患部に照射します。
通常、ジェルを塗り、目隠しをした状態で顔全体に光を照射していきます。
IPL装置は、500~1200nmの波長を持つ可視光線および近赤外線を発するフラッシュランプがあります。
それにより熱を発生させ、メラニン、赤血球のヘモグロビン、水分などに熱を与えます。
その結果、シミを壊したり、赤みが減ったり、小ジワを改善したりする効果を発揮します。
つまり、皮膚のトラブルを総合的に改善する効果があります。また、YAGレーザーやルビーレーザーなどのレーザー治療に比べると効果や副作用はマイルドです。例えば、Qスイッチレーザーはシミ治療後にテープを10日間程度貼らないといけませんが、フォトフェイシャルではそのような必要はありません。
1-1.フォトフェイシャルのメカニズム
シミ取りレーザーが一つの波長の光を照射するのに対して、フォトフェイシャルは、複数の波長を含んでおり、症状に合わせた光を選択的に照射できるため、様々な皮膚疾患に対応可能です。
また、「波長(光の長さ)」「パルス幅(光の照射時間)」「出力」「冷却温度」を肌の状態により調整しながら治療します。
フォトフェイシャルが細胞レベルで与えるメカニズム・・・フォトフェイシャルは、さらに細かく見ると、以下のようなはたらきにより、細胞を若返らせる作用があります。
- 細胞増殖刺激(ケラチノサイト、線維芽細胞など)・・・コラーゲンを生成します
- サイトカインや増殖因子の分泌促進(bFGFなど)・・・コラーゲンを生成します
- 熱刺激により熱ショック蛋白(heat shock protein: HSP)が誘導されます。HSPファミリーのひとつであるHSP47はコラーゲン生成を促進します。HSP70ファミリーはプロテアソーム系を活性化することで、異常蛋白を処理します。さらに、熱刺激を慢性に加えることにで、蛋白の糖化反応が減少し、肌を若返らせる効果が期待できます。
2.フォトフェイシャルのお悩み別効果
2-1.シミに対する効果
老人性色素斑(紫外線や加齢によるシミ)、雀卵斑(そばかす)、くすみ、色調の濃い脂漏性角化症(いぼ)に対し非常に有効です。シミの濃さによっては数回の施術が必要になり、徐々にシミやくすみを目立たなくしていきます。直後~数日後の間に細かいかさぶたのようなものができることがありますが、無理に取らずに放置しておいてください。しばらくすると自然に落ちていきます。無理に取ると、摩擦による炎症でシミがかえって残ることがあるので注意してください。
治療前/3日後(かさぶたができています)/2週間後(自然に取れてきれいになっています)
2-2.赤みに対する効果
紫外線ダメージによる毛細血管拡張、加齢によるクモ状血管腫、老人性血管腫、赤みが比較的弱い酒さ(しゅさ)などの、血管が広がった状態を改善します。
また、表皮の赤みには高い効果が期待できますが、深部にある紫色や青色の血管には改善は期待できません。
毛細血管が拡張した赤ら顔が改善しています。
2-3.小ジワに対する効果
深いシワになる前に早めの対策をしたい方や、毛穴の開きが気になりだした方は、症状の悪化を予防するのに有効です。肌の張り改善やタイトニング効果があります。ただし、深いシワや毛穴の開きが強い場合は、他の治療をおすすめします。
2-4.毛穴の開きに対する効果
熱による毛穴を引き締める作用があります。
治療前・2週間後・・・1回の治療を行った結果です
2-5.ニキビに対する効果
ニキビ菌が出すポルフィリンという物質に光が吸収され、活性酸素が発生して殺菌作用が生まれます。
また、ニキビの赤みに対して効果があります。皮脂腺分泌を抑えます。早めに治療をされると、ニキビ跡も残りにくいです。
ただし、実はフォトフェイシャル単独だと効果は十分とは言えません。
また、炎症がある場合や化膿をともなった白ニキビには効果はありません。
2-6.炎症後色素沈着(ニキビ跡など)に対する効果
炎症が鎮静化した後の赤みを伴ったニキビ跡などの炎症後色素沈着にはフォトフェイシャルが有効なこともあります。
皮膚のターンオーバーを高めることで、メラニンを外に出しやすくなります。
治療前/2週間後・・・赤みだけでなく、ニキビ跡の黒ずみ(炎症後色素沈着)も改善しています。
・炎症後色素沈着がある方は注意
炎症後色素沈着とは、ニキビ跡や、レーザー治療後、皮膚の刺激があった場合に見られる皮膚の黒ずみです。炎症後色素沈着は、治療しなくても半年程度で自然に軽快することが多いですが、何年も残ることがあります。
一般的には、ハイドロキノンなどの美白外用剤が第1選択ですが、フォトフェイシャルを併用することで改善の実感が得られることが多いです。ただし、弱めで慎重に行う必要があることと、3週間程度の間隔で繰り返しが必要です。
ハイドロキノンの詳細は、「ハイドロキノンの効果と効果を最大限に高めるための5つの注意点」をご覧ください。
2-7.肌質改善効果
フォトフェイシャルは、表皮と真皮の両方に働きかけ、皮膚の細胞の代謝が高まります。肌つやを取り戻し、肌質改善、美白効果が期待できます。
2-8.脱毛
毛根の黒い色素に反応して、熱破壊により永久脱毛を行うことが可能です。
600~950nmの波長域の光を使用します。完全にツルツルになるためには5~10回程度の回数がかかります。
3.フォトフェイシャル以外のシミの治療法との効果の比較
フォトフェイシャル以外に多くのシミの治療法があります。
3-1.イオン導入
ビタミンCを電気の力を使って皮膚に浸透させる治療法です。週に1回~月に一回程度を継続的に行います。
フォトフェイシャルほどの効果はありませんが、併用することでより効果が高まります。
3-2.ケミカルピーリング
酸性の薬品を塗布して、皮膚表面の余分な角層を溶かす治療法です。月に1回程度を何回かまず行うことをお勧めします。
こちらもフォトフェイシャルほどの効果はありませんが、併用することでより効果が高まります。
3-3.ハイドロキノン
メラニンを抑えてシミを改善します。皮膚のターンオーバーを高めるトレチノインと併用するとさらに効果が高まります。ただし、数ヶ月程度塗り続ける必要があります。
ハイドロキノンとトレチノイン効果の詳細は、それぞれ
「ハイドロキノンの効果と効果を最大限に高めるための5つの注意点」、
「画像でわかるトレチノインの効果と効果を最大限高める9つの注意点」を参考にしてみてください。
治療法の比較
これらの治療法をまとめると以下のようになります。
|
効果 |
費用の目安 |
自宅で可能 |
フォトフェイシャル |
☆☆☆ |
1~4万円 |
× |
イオン導入 |
☆ |
1万円 |
× |
ケミカルピーリング |
☆☆ |
1万円~3万円 |
△ |
トレチノイン・ハイドロキノン |
☆☆☆ |
数千円~5万円 |
○ |
4.フォトフェイシャルの効果を高めるためのポイント
4-1.他の治療法を併用する
3章でご紹介したような他の治療法を同時に行うことで相乗効果が得られます。治療期間中および終了後もハイドロキノン軟膏やビタミンCローションなどの外用剤を3~6ヵ月間使っていただくと、フォトフェイシャルの効果を長持ちさせる効果があります。
4-2.定期的に治療を継続する
紫外線を浴びる限り、シミは少しずつ出てきます。
最初は月に1回程度で何回か行い、ある程度改善した後も定期的にメンテナンスをするときれいな状態を維持できます。
4-3.肝斑があれば、フォトフェイシャルの前に治療しておく
日光性色素斑(老人性色素斑)の中に肝斑が混ざっていることがあります。
その場合、肝斑の治療(トラネキサム酸やレーザートーニング、ハイドロキノン軟膏など)を先に行った方がよいです。そのような方に最初からフォトフェイシャルを使うと肝斑が悪化することが多いです。
肝斑の治療に関しては、「肝斑とは?治療で失敗しないために知っておくべき5つのこと」を参考にしてみてください。
まとめ
フォトフェイシャルは、複数の種類のシミ、赤み、毛穴、ニキビなどに効果を発揮できるオールマイティーな治療機器です。ただし、肝斑には効果がないなどいくつかの注意点があります。また、肌の状態に応じて設定を変える必要があり、適切な設定で正しく使うことでその効果を最大限に発揮できます。
参考文献
Photomedphotobiol. 24: 93-95, 2002
Free Radic Biol Med. 31: 1593-1602, 2001