シミや小ジワの改善を目的とした美容治療にフォトフェイシャルというものがあります。
多くの医療機関でも行われていますし、エステやサロンでも行われており、耳にすることも多いと思います。
フォトフェイシャルという治療は、実際に高い美肌効果を得られるものですし、比較的気軽に行える治療ですので、シミや小ジワに悩まれている方は試してみる価値のある治療法です。
しかし、フォトフェイシャルで得られる効果は個人差があり、効果を感じにくいこともあります。
また、一概にフォトフェイシャルと言っても、実際には様々な種類の機種があり、施術のやり方によっても得られる効果や安全性に差が出てきます。
ここでは、フォトフェイシャルとはどのような治療法であるのかの説明から、得られる効果、機種の違い等、フォトフェイシャルのすべてをご説明します。
読み終えていただければ、フォトフェイシャルでの治療を行うべきかどうか、どの機種で、どう進めていくべきかを理解いただけるでしょう。
ぜひ、参考にしてください。
目次
1.フォトフェイシャルとは
IPL(インテルス・パルス・ライト)という広波長域の強力な光を皮膚に照射し、肌症状を改善する施術です。1990年代から、皮膚治療に用いられるようになりました。主に、肌のシミや赤み、小ジワ、毛細血管拡張症(赤み)や紫外線ダメージによって起こる諸症状を緩やかに改善させる効果があります。また、熱刺激による肌質改善も期待できます。
1-1. フォトフェイシャルのメカニズム
IPL装置は、波長域500~1,200nmの可視光線・近赤外線を発振するフラッシュランプを搭載しています。機種にもよりますが、光を当てると同時に、表皮を冷却しながら真皮細胞にまで熱刺激を加えることも可能です。不要な光を調整するカットオフ・フィルターにより、症状に合わせて様々な治療ができます。
皮膚の中にある、メラニン・ヘモグロビン・水などに光が吸収され、シミ、小ジワ、赤みを改善するなど様々な効果を発揮します。波長、パルス幅、出力、皮膚接触面の冷却温度の調整により照射の強弱を設定することが可能です。一般的に、波長やパルス幅は短く、出力や冷却温度は高くすると強い設定になります。
1-2.レーザーとの違い
レーザーには様々な種類がありますが、基本的には機種特有の単一の波長を発振します。
波長とは、光の波の長さのことで、例えば太陽の光は長いものから短いものまで様々な波長を含んでいます。
波長によってどの物質をターゲットにするかが異なります。
例えば、ある波長のものはメラニン(シミ)に、あるものはヘモグロビン(赤み)に作用します。
・レーザー・・・”単一の波長で、直進的な光”を発振します。通常、シミ用、赤み用などに分かれており、症状に適したレーザーの機種や波長を選択して治療をします。
・フォトフェイシャル・・・”複数の波長で、分散性のある光”を含んでいます。そのため、様々な皮膚疾患(シミ、赤み、ニキビなど)に対応可能です。
光の波長を音にたとえると、レーザーは単音になりますが、フォトフェイシャルは複数の音を同時に鳴らしているイメージです。
また、レーザーと比較して肌に負担がかかりづらいため、広い範囲に穏やかに照射できます。一方、レーザーほど単一の疾患に強いというわけではありません。その分レーザーと比べ照射回数は多くなりますが、施術後すぐにメイクができるなど、ダウンタイムがほとんどないのも特徴です。
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治療回数 |
治療後の処置 |
炎症後色素沈着のリスク |
フォトフェイシャル |
通常は1回 |
1週間程度テープを貼る |
リスク大 |
シミ用レーザー |
3~5回以上 |
直後からメイクOK |
リスク少ない |
2.フォトフェイシャルの効果
2-1.シミを改善する
老人性色素斑(紫外線や加齢によるシミ)、雀卵斑(そばかす)に対し有効です。メラニンを含む細胞に作用し、肌の新陳代謝を促します。炎症後色素沈着にも効果が期待できます。しかし、通常は肝斑に対して効果がなく、照射してしまうと逆に濃くなってしまうことが多いので注意が必要です。
また、色調の濃いメラニンを多く含んだ脂漏性角化症(いぼ)には、周囲を保護して強い出力で照射することで効果は期待できますが、盛り上がっている場合には効果は期待できないこともあります。
2-2.赤みを改善する
血液の酸化ヘモグロビンに対する作用による血管性病変の改善が期待できます。主に、紫外線ダメージによる毛細血管拡張、加齢によるクモ状血管腫、老人性血管腫、紅潮が比較的弱い酒さ(しゅさ)などの、血管性病変が治療の対象とされます。
また、表皮の赤みには高い効果が期待できますが、深部にある紫色や青色の血管には改善が見られにくい傾向があります。赤みは直後から改善することも多いですが、数日後や数回の治療後に改善することもあります。
2-3.小ジワを改善する
熱作用により真皮細胞を刺激し、コラーゲン線維を整えます。それにより、皮膚表面の小ジワが改善します。小ジワの改善は数回治療すると見えてくることが多いです。ただし、IPLの熱作用は比較的弱いので、深いシワの場合はあまり効果が期待できません。
2-4.たるみを改善する
水分に吸収される波長の光による熱作用、ヒートショックプロテインが誘導され、老化細胞に見られる糖化反応が減少することや、増殖因子の誘導により、肌の張りの改善や引き締め効果が期待できます。
しかし、実際は写真上などで劇的にでるほどではありません。
たるみ治療に関する詳細は、「これを知れば格段に顔のたるみが減る!治療から予防までの全知識」を参考にしてください。
2-5.肌質を改善する
ケラチノサイトや繊維芽細胞を刺激し、肌細胞の新陳代謝が高まります。肌つやを取り戻し、肌質改善、引き締め効果が得られます。その他、毛包脂腺の熱損傷により皮脂分泌が抑制され脂性肌が改善するともいわれています。
2-6.ニキビ、ニキビ跡を改善する
ニキビの原因となる菌が産生するポルフィリンという物質に光が反応して、活性酸素が生じることで、殺菌作用が期待できます。また、皮脂腺の栄養血管を減らすことで皮脂腺の分泌を抑えます。
ニキビ跡の赤みに対しては、特に改善が期待できます。また、外用薬やケミカルピーリングを併用することでさらに効果が高まります。
2-7.脱毛
毛根を熱破壊することで永久脱毛が可能です。1.5~2ヶ月に1回の間隔で照射し、毛の濃さにもよりますが、5~6回繰り返します。
3.フォトフェイシャル施術のステップ
STEP1.洗顔をする
STEP2.ジェルを塗る
通常はジェルを塗布してから照射しますが、不要な機種もあります。
STEP3.両眼を遮光保護する
ゴーグルを載せ、眼球を保護します。
STEP4.テストショットをする
目立たないところに照射して反応を見ます。反応に応じて、強さを再調整します。
STEP5.反応を見ながら全体に照射する
シミへの照射後、しっかり反応すると薄いかさぶたのようなものができます。
かさぶたは数日で自然にはがれ、その後シミが薄くなっていきます。
照射を何度か行い、シミを徐々に薄くしていきます。
かさぶたが発生しない程度の強さだと、効果が見られにくいです。
STEP6.アフターケア
施術後は、保湿と紫外線対策をしていただきます。
4.効果的なフォトフェイシャルの回数
月に1回を目安として、4~5回施術を受けていただくと徐々に改善します。
(1回の施術時間は、40~60分です。)
5.事前に知っておくべきフォトフェイシャルのリスクと回避方法
5-1.ヤケドすることがある
照射出力が強かったり、冷却が不十分だったりした場合、まれにヤケドを起こすことがあります。 また、ヤケド後に色素沈着や色素脱失を生じる場合もあります。 もともと皮膚の色が濃い方や日焼けしている場合はヤケドを起こしやすいので注意が必要です。
対策・・・万が一ヤケドを負ってしまった時は、すぐに施術した医師に相談して下さい。
患部を十分に冷却した後、ステロイドの外用薬を塗布し経過を診ます。
また、色素沈着の予防のために最低1ヶ月は美白剤を塗ります。
迅速な処置を施すことで、色素沈着や色素脱失のリスクを防ぎます。
5-2.手包周囲炎がおきることがある
うぶ毛の濃い部分に光を照射すると、ぷつぷつと赤い発疹のような炎症が起こることがあります。
対策・・・炎症を抑える外用薬を塗布して頂くと、数時間~数日後には治癒することが多いです。
5-3.痛みを感じることがある
通常では耐えられる範囲内ですが、照射時に痛みを感じることがあります。
接触不良や出力が強すぎる場合が考えられます。
対策・・・痛みがあればすぐに医師に知らせてください。痛みや赤みなど過剰な反応を生じた場合は、直ちにクーリングを行うことで、やけどや色素沈着のリスクを最小限にできます。
5-4.虹彩炎を生じることがある
上まぶたに対して保護をせずに照射したために、虹彩炎やぶどう膜炎が生じたという報告があります。
対策・・・上下のまぶたに施術を行う場合は、点眼麻酔下にコンタクトシェルを装着して眼球を保護します。
5-5.シミが再発することがある
照射後の冷却が不十分な場合や症状の程度によっては、一時的な改善はみられても、数ヶ月後に再発してしまうこともあります。
対策・・・効果が出にくい場合は、内服薬や外用薬の併用や、他治療への切り替えを考えます。また、症状の改善が目で見て分かるよう、治療前と治療中の経過を写真に撮るなど、記録を残すことも重要です。
5-6.施術を受けられない場合がある
妊娠中や授乳中の方、レチノイドの摂取中の方、光線過敏症の原因となる疾患または遺伝的状態、または光線暴露後に悪化傾向がある方は受けられません。また、美容目的で金の糸などをされている方、長期の糖尿病、血友病、または血液の凝固能障害、および心臓ペースメーカーやインプラントがある場合も、医師に相談してください。
対策・・・ご自分の状態をカウンセリングの時点で医師に正しく伝えることが重要です。
5-7.肝斑が悪化することがある
未治療の肝斑に対し、強い照射を行うと、肝斑が悪化することがあります。まずはその他の治療により、肝斑が改善した後、状態を見ながらフォトフェイシャルを開始できます。
フォトフェイシャル治療前/6ヵ月後(4回治療後)・・・下の方にある日光のシミ(老人性色素斑)は改善していますが、肝斑が悪化しています。
対策・・・肝斑がないかを治療前に医師に相談してください。肝斑がある場合は、トレチノイン・ハイドロキノンなどの美白剤やトランサミンなどの内服薬を先に行います。肝斑が改善してからフォトフェイシャルをはじめるとよいです。
肝斑の症例写真です。頬骨やこめかみの固いところに、境界がぼんやりした茶褐色のシミが左右対称にある場合は肝斑を疑います。
肝斑の見分け方は、「シミと肝斑!見分け方とそれぞれに適した治療法」を参考にしてください。
“肝斑がある場合の注意事項”
- 肝斑がある場合、肝斑がある場所は、フォトフェイシャルの設定は弱くします。熱刺激や、表皮のターンオーバー促進により色調が改善することもあります。赤み(毛細血管拡張症)に対しては強い照射を必要とすることが多いため、これにより薄い肝斑が濃くなることがあるので、注意が必要です。
6.フォトフェイシャルの機種間の比較は困難
多数のIPL装置が市場に出回っています。 波長スペクトル、フルエンス範囲、パルス持続時間などに基づいたIPLの比較は、無意味であることが分かっています。
それらにより臨床効果が違うという証拠はありません。
また、正確に比較するためには、様々な要素があるため、それらを同時に考慮するのは困難です。
さらに、パルスが均一に放出されるかどうかなども重要で、例えばシグモイド状に放出されるような機種は、波長の分布フルエンス(単位面積あたりのエネルギー量を指し、J/cm2の単位で示される)にむらがあります。
“フォトフェイシャル装置の好ましい特性”
- フォトフェイシャル装置の好ましい特性は、大きなコンデンサバンクを持ち、一定電流がフラッシュランプに供給され、その結果、ほぼ正方形のパルスが放出されるような特性が望ましいです。
7.フォトフェイシャルの器械の選び方のポイント
様々な器械があり、特徴もさまざまです。以下を参考にしてみて下さい。
7-1.あまり新しい器械には飛びつかない
実績があるものを選ぶとよいです。また、新しい器械だとまだ医師が使い慣れていないこともありえます。
7-2.コロコロ器械を変えない
結局どれに効果があったのかがわかりにくくなります。
信頼できる医師のもと、カウンセリングを受けながらじっくりと経過をみていきましょう。
7-3.安全性が高いものを選ぶ
効果と副作用は表裏一体にあります。強すぎる治療は一般的に副作用のリスクが高いといえます。
また、より長い波長が優先的に水に吸収され、表皮のやけどのリスクを高めるので、950nmを超える波長がカットされているような機種が望ましいです。
8.おすすめのフォトフェイシャルの器械
効果的かつ副作用のリスクが少ない器械をお勧めいたします。
また、施術者が慣れていて、なおかつある程度実績のある機種が安心です。
ここでは、SRというフォトフェイシャルの器械をご紹介いたします。
SR(フォトRF・オーロラ)
・特長1:光治療に高周波治療はプラスされているため、効果が高い
このフォトフェイシャルの器械は、光エネルギー(IPL)に高周波(RF)がプラスされています。
光エネルギーとRF(高周波)エネルギーの相乗効果により、光治療単独よりも、臨床効果や安全性を高まります。
・特長2:痛みがやけどのリスクが低い
一般的に、東洋人(Skin Type Ⅲ~V)の表皮にはメラニンが多く存在するため、レーザー治療や光治療を行う際に、効果を上げようとして照射出力を上げていくと、痛みややけどのリスクが高まります。
SRでは、RF エネルギーを追加することで、光エネルギーは最小限に抑えられるため、やけどのリスクが低くなっています。
RF エネルギーは、光エネルギーとは異なる性質を持っています。光はメラニンや血管に吸収されてしまいますが、RFエネルギーは、それらに吸収されることなく、より深い真皮層へ熱エネルギーを与え、光エネルギーと相乗効果を発揮できます。
・特長3:市場に出てから長い
SR(フォトRF)は、比較的歴史が長いです。施術者も熟練していることが多く、安定した治療を受けることができます。
“フォトフェイシャルのその他の機種”
- フォトフェイシャルには、その他ライムライト(キュテラ社)、フォトフェイシャルファースト(ルミナスワン)(ルミナス社)、サイトンBBL(サイトン社)、フォトシルクプラス(デカ社)などがあり、代表的な機器です。
フォトフェイシャル各種機械の波長の分布の比較です。
これだけで単純な優劣の比較はできませんが、サイトンBBL以外は広い波長の分布を持っています。
ただ、前述のように、950nmを超える波長がカットされているような機種の方が表皮のやけどのリスクを最小限にできます。
そのため、フォトフェイシャルファーストとライムライトは、選択する波長によっては注意が必要です。
9.フォトフェイシャルの料金相場
Googleで「フォトフェイシャル 料金」と検索し、美容クリニック上位20施設での顔全体1回の施術料金を調べました。
トライアルや限定初回料金、セット料金の金額は除外しています。
調べた結果、顔全体1回につき、料金は平均で約25,000円でした。料金の幅は1万円~4万円台でした。
クリニックによっては、部位別に細かく料金が設定されていたり、5回セットなどのセット料金で行っていたりする施設もあります。
10.フォトフェイシャルを効果的に活用するための5つのポイント
10-1.シミへの照射後にできるかさぶたを無理にはがさない
シミへの照射後、薄いかさぶたのようなものができることがあります。
かさぶたは数日で自然にはがれますが、無理にはがすと、刺激により色素沈着が起こることがあります。
メイクを落とす時などもこすらないように気をつけましょう。
10-2.紫外線防止を心がける
レーザー同様、光を当てて行う施術ですので、日焼けした肌には予期せぬトラブルも起こりかねません。
施術前の紫外線対策はもちろん、施術後は特に肌が敏感になっています。
しっかりと日焼け止めを塗ったり、日傘をさしたりして肌を刺激から守りましょう。
10-3.ケミカルピーリングを併用する
フォトフェイシャル単独での治療よりも、ケミカルピーリングを併用することでより効果を得られます。ケミカルピーリングの効果もありますが、ピーリングで余分な角質を除去することで、光が届きやすくなります。
ケミカルピーリングの詳細は、「間違えてはいけない!ケミカルピーリングの正しい選び方と施術の受け方」を参考にしてください。
10-4.食生活を整え、併用療法を取り入れる
ビタミンCを含むサプリメントの服用や、バランスのとれた食生活を心がけることも大切です。また、治療期間中や終了後も、ビタミンCローションなどの外用薬を長く継続されるとよりよいです。光治療の効果だけでなく、肌環境をご自分でしっかり管理されることが、効果継続に重要と考えます。
10-5.皮膚に詳しい医師のもとで治療を受ける
ダウンタイムもほとんど無く、安心して受けられるフォトフェイシャルですが、思わぬ副作用が起きる場合もあります。レーザー・光治療を数多く治療しており、すぐに対処できる医師のもとで施術を受けるとよいです。
まとめ
シミの治療法には、レーザーを使用することも多いですが、ピンポイントでシミひとつを改善するよりも、全体をまんべんなくきれいにした方は印象が良くなります。そういう意味で、シミ、小ジワ、赤みなどをトータルで改善するフォトフェイシャルは有効だと考えられます。
参考文献
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