スレッドリフトの種類とリスクについて

スレッドリフトとは糸を皮膚に刺入して皮膚を持ちあげることによるたるみ治療の一つです。

スレッドリフトは、フェイスリフトなどの手術によるたるみ治療とは異なり、腫れや内出血は明らかに少なくてすみます。

また、スレッドリフトは速効性があるため、早めに結果を出したい方にスレッドリフトは向いています。

ただし、スレッドリフトには、リスクや治療の限界があります。

適応を間違ったりすると、かえって悪い結果にならないとも限りません。

今回、この記事を読んでいただくことで、スレッドリフトに関してあなたにあった効果的で適切な方法が分かると考えます。ぜひ、参考にしてください。

1.スレッドリフトとは

スレッドシフトとは、糸によるたるみ治療のことです。

スレッドリフトでは、とげ（引っかかり）のついた糸を用いて下がった組織を引きあげます。

切開は行わないことも多く、行うとしてもほんの小さな切開で済みます。

フェイスリフトなどの皮膚を切開する方法に比べて、スレッドリフトは体への負担が少ないと言えます。

糸の形状、素材、使い方などに関しても様々な種類があり、改良が加えられています。

1-1.スレッドリフトの歴史

スレッドリフトは、1988年にロシアで考案され、2000年以降に広まりました。

比較的簡便で、満足感を即時的に得られるたるみ治療として盛んに行われています。

現在ではメスを使わないでできるたるみ取りの一つの方法として多くのクリニックで行われています。

1-2.スレッドリフトのたるみ治療における位置づけ

スレッドリフトは、比較的たるみが軽度の症例に有効です。

たるみが強い方には、糸によるリフト治療単独では効果が乏しいこともあり、他のリフトアップの治療と組み合わせることが必要になります。

1-3.スレッドリフトの適応がある方

以下の方はスレッドリフトの治療に適しています。

・年齢が若い方（30∼40代）

・皮膚が比較的薄い方

・頬骨部が小さい方

・頬肉がない方                                                     

・エラが張っていない方

1-4.スレッドリフトが向いていない方

以下の方はスレッドリフトに適していません。

・年齢が高い方（50∼60代）

・皮膚が厚めの方

・頬骨の突出が大きい方

・頬の脂肪が多い方

・エラが張っている方

・マリオネットラインを改善したい方

1-4.スレッドリフトの麻酔方法

麻酔テープまたは麻酔クリームを使用します。

1-5スレッドリフトの手順と所要時間

スレッドリフトのマーキングは座った状態で行います。

施術は仰向けで寝た状態で行います。

スレッドリフトの所要時間は15分から1時間程度ですが、入れる糸の本数により異なります。

2.スレッドリフトの固定方法の分類

ここではスレッドリフトの4つの方法について解説いたします。

2-1.固定法

スレッドリフトの中でも、骨膜(骨の表面を覆う膜)や深部筋膜のような固い組織に糸を固定する方法です。

固定法は、皮膚がかなりたるんでいる方や、強いリフトアップ効果を望む方に向いています。

・注意事項

①施術後に頬骨部近くの皮膚がむくんで見えることがあります。

およそ2∼3週間ほど経つと自然になります。

②皮膚のくぼみが生じた場合、早めに解消しないと跡が残ることがあります。

③スレッドリフト時の麻酔の効果により、直後に目の開け閉めがしにくくなったり、口元の筋肉の動きが不自然になり、口元がゆがんで見えることがありますが、通常、翌日には軽快します。

④スレッドリフト後1∼2週間ほどは治療部位に痛みを感じる可能性があります。

また、表情を強く作ったり口を大きく開けすぎると、固定が外れることがあります。

2-2.変形法

皮下脂肪や表在性筋膜、真皮深層などの固定性が弱い組織に「溶けない糸」を用いるスレッドリフトの方法です。

固定型方式に比べて固定する部位が不安定ですが、狭い範囲に対して行えるスレッドリフトの方法です。

髪の毛がない部位でも施術可能で、比較的簡便な方法です。

固定法でよく見られる頭痛や頬が大きく見えるようなデメリットはありません。

直後に腫れや出血などが少なく、結果がすぐ分かるというメリットがあります。

・注意事項

①施術後、糸の結び目部位に痛みやむくみが生じることがあります。

②その他、上記固定法②～④と同様です。

2-3.非固定法

コグ（とげ）付き糸をたるんだ皮膚または皮下組織に挿入し、つり上げるスレッドリフトの方法の一つです。

皮膚または皮下組織に物理的な固定点を作らずに、糸のコグの力で固定します。

この方式は、固定型方式に比べて糸の本数制限が少なく、簡便に施術できます。

また治療後の側頭部の痛みも少ないというメリットがあります。

この方式の最も代表的な糸はアプトスという製品で、ポリプロピレンという溶けない素材でできています。

・注意事項

①上記変形法②と同様です。治療部位を押したり口を大きく開けるなどの刺激を加えると、痛みがさらにひどくなります。

過度に表情筋を動かしたり口を大きく開けないようにします。

②施術後に頬骨近くの皮膚がむくんで見えることがあります。

普通2∼3週間ほど経つと自然な感じでなじんできます。

③施術時の麻酔の影響により直後に目の開閉が不自由になったり、口元の筋肉の動きが不自然で口元がゆがんで見えることがあります。

④直後から１か月以内に皮膚のくぼみができることがあります。

なるべく早く積極的に解決する方がよいです。

2-4.垂直法

頬中央部を中心に口元のシワを伸ばし、重力と反対方向に皮膚をリフトアップする方法です。

口元のシワとほうれい線に対して改善効果があります。

従来の方法を補う手段として用いられるスレッドリフトの方法です。

また、施術後に問題になるような、頬骨部が大きく見えたり顔が大きく見えたりする現象を緩和する効果もあります。

・注意事項

一般のスレッドリフトの注意事項と同じです。

3.スレッドリフトの治療効果

3-1.固定法

糸を使ったリフトアップの方法の中で、皮膚を引き上げる効果が最も強力です。

ほうれい線、口周りのもたつき、頬のたるみ、フェイスラインの改善、口元のシワに適応があります。

3-2.変形法

頬骨部が大きい方、頬がこけている方、口周りのもたつき、頬のたるみ、フェイスラインの改善、部分的に施術を望む方、ダウンタイムを最小限にしたい方に向いています。

3-3.非固定法

ほうれい線、口周りのもたつき、頬のたるみ、フェイスラインの改善、二重顎、弾力アップ、眉間・額のシワに適応があります。

3-4.垂直法

軽いたるみを改善したい場合、頬中央をボリュームアップしたい場合、他の方法に追加治療が必要な時、皮膚のたるみが強い方、頬骨部が発達している方に適応があります。

4.スレッドリフトのリスク・副作用

スレッドリフトの副作用はほとんどが一時的で、時間が経てば解消することがほとんどです。

頻度が高い順に副作用をあげました。

4-1.顔面の非対称

顔面の非対称は、直後に多く見られます。

リフトアップの左右差は、施術後すぐにマッサージで矯正しなければなりません。

主に腫れによることがほとんどで、1～2週間ほど持続することもありますが、時間が経てば通常落ち着きます。

4-2. 内出血と血腫

スレッドリフトは針を使うことが多いため、内出血ができることがあります。

内出血により皮下に血液が多く溜まった際には除去する施術が必要となることがあります。

4-3.痛み

スレッドリフト後、表情を作ったり食事をする時などに違和感や引きつれ感を感じることがたまにあります。

痛みは早ければ1∼2日でなくなることもありますが、通常は2週間か、場合によっては数か月間断続的に続くことがあります。

しかし、溶ける糸を使ったスレッドリフトの場合は、糸が溶けて吸収されるため自然に痛みはなくなります。

2週間までの間は、頭痛のような症状を訴えることがあり、急に腫れて痛みが出る場合は血腫や感染の可能性もあります。

4-4.糸の触知

太い糸を使った場合、浅く挿入された場合、あるいは皮膚が薄い方には、触った時に糸が触れることがあります。

溶ける糸を使用した場合は、通常は時間とともに自然に解消されますが、違和感があったり糸の食い込みによる跡が残りそうな時は、糸を抜去したほうがよいです。

4-5.皮膚のくぼみ

皮膚のくぼみは、糸に引っ張られることで、えくぼのようにくぼんで見える現象のことです。

ただし、直後のリフト効果を強く保つためにわざと残しておくこともあります。

また、くぼみは1∼2週間後からできる時もあります。

施術後3∼4週間以内にはマッサージによりくぼみはほとんど消えますが、マッサージで解決しない場合は、糸を除去したほうがよいこともあります。

4-6.ゴルゴ線の悪化

ゴルゴ線がくっきりある方は、治療後さらに悪化することがあります。

治療前のゴルゴ線の程度をチェックすることが重要です。

4-7.糸の移動と突出

コグ糸を使った場合に、糸が下方や上方に移動しながら吹き出物のようにぷっくりと突き出ることがあります。

糸の固定点が弱い時に生じます。

4-8.炎症、感染

炎症の起こる最も一般的な原因は、髪の毛が皮膚の中に入ってしまうことが多いです。

もし炎症が起きた場合は、抗生剤や消炎剤の服用を開始し、1週間程度治療しても状況が良くならなければ糸を除去します。

中には1年後に感染が起こった例も報告されています。

赤みや腫れが続く場合は、感染を疑います。

4-9.神経損傷

スレッドリフト施術後に目が閉じにくかったり、口角が下がることがありえますが、これらのほとんどは麻酔による一時的なもので、通常は翌日にはなくなりることがほとんどです。

4-10.傷

スレッドリフトでは、細い針を使用するので、キズ跡が大きく残ることはありませんが、ケロイド体質の方は針の跡が赤く残ることがあります。

4-11.唾液腺の損傷

非常にまれに耳下腺（耳の前下方にある唾液腺）を損傷することがあります。

5. スレッドリフトの効果を高めるための方法

5-1.本数を多くする

スレッドリフトにおいて、挿入する糸の本数が多いほどコラーゲンが刺激されて皮膚の再生効果が高まります。

ただし、挿入する本数が多すぎると、腫れが強く出たり、あざができることがあるため注意が必要です。

中・下顔面全体であは、50∼100本程を使うことをお勧めします。

5-2. 顎ライン・二重顎では2種類の糸を組みわせる

突起・トゲのない糸とコグ糸を一緒に使うと効果が増大します。

5-3. 首のシワは他の治療と組み合わせる

ボトックスやフィラーなどとあわせてスレッドリフト施術を行うとより効果が出ます。

6.スレッドリフト施術後の過ごし方の注意

ここではスレッドリフト後の一般的な注意点についてまとめました。

クリニックによって指示が異なることがあるので、詳細は担当医に確認してください。

・できるだけ安静にして、運動や激しい動きは控えるようにします。

・スレッドリフト後、腫れを最小化するため、最初の3日間はクーリングを行い、睡眠時には枕を利用して上半身を高くします。

・スレッドリフト当日は洗顔行わず、翌日の朝から洗顔するようにします。

・スレッドリフト直後に皮膚にくぼみがみられる場合はマッサージをしてほぐします。

　4週間以上経つと線維化が起こりくぼみが残ってしまう可能性があります。

・内出血が起こった場合、１～２週間ほど経過すると自然に消えることが多いです。

・スレッドリフト施術直後に目が閉じにくかったり、口角が上がる、あるいは下がるといった症状がおこることがあります。

　これらはたいてい麻酔によるもので、翌日くらいには通常改善します。

・食後は柔らかいものを食べ、硬い食べ物は約1か月控えるようにします。

・スレッドリフト施術後3∼4日で軽い運動はできますが、マッサージやサウナや飲酒、激しい運動は3∼4週間経ってから行ってください。

・パーマや染色など、髪に薬品を使うのは1か月後から可能です。

・スレッドリフトの治療部位を触ったり、こすったりしないようにします。

7.その他の注意事項

・特にあくびや口を大きく開けることに注意します。

・暑い所にいると腫れがひどくなる可能性があります。

・スレッドリフト施術部の針跡は普通2∼3日でなくなります。

・当日、顔の腫れはありますが、たいていは2∼3日で引きます。

頭皮に固定した場合は、頬骨からこめかみの辺りまで腫れることがありますが、通常1週間ほどで引きます。

・凸凹のあるコグ付き糸を使った場合は糸を入れたところの裏側を触ったり、その部位が刺激されるとチクッとした痛みがあることがありますが、通常は1∼2週間以内になくなります。

・スレッドリフトの2週間後∼1か月間後くらいに皮膚のくぼみが生じることがあります。

必ず診察の上、マッサージでくぼみを解決しなければなりません。

・1か月経っても食べ物を噛んだり大きく笑ったりする時に糸リフトの部位にプチッという音がする可能性があります。

ただし、そのくらいでリフトアップ効果が下がったりすることはほとんどありません。

8.スレッドリフトの料金

GoogleならびにBingで「スレッドリフト」というキーワードで検索し、15院の「スレッドリフト」の価格を調査した結果、以下の通りになりました。（2018.2現在の価格です。変更があることもあります。）

スレッドリフトは保険診療適応外の自由診療のため、価格にばらつきがあります。

クリニックによっては、他の治療（ヒアルロン酸注射など）とセットで行うセットプラン料金としているところもあります。

麻酔料金や薬料金などが料金込みのクリニックとそうでないところがあるので、あらかじめ確認して下さい。

まとめ

スレッドリフトの適応や方法、効果の高め方について解説いたしました。

ご自分に適したスレッドリフトの方法や糸の種類を選択し、施術後に何かあった場合は適切な処置を行うことが大事です。

参考文献

Bella Pelle 2(4): 272-277, 2017.

Bella Pelle 3(4): 282-285, 2018.

糸リフト・テクニック.JAASアカデミー出版. 東京. 2018

日本形成外科学会総会・学術集会抄録 (58): 222-222, 2015.