ハイドロキノンは、皮膚のメラニンの生成をおさえて、シミを改善する塗り薬ですが、近年は化粧品にも配合されるようになりました。
ハイドロキノンを皮膚科で処方されたり、化粧品として購入されたりして、使用してみたものの、なかなか効果が実感できない方も多いのではないでしょうか?
実は、ハイドロキノン単独ではそれほど目に見える効果をすぐに出すことはあまりできません。
もちろん、ハイドロキノン単独でも長期間使うことでそれなりの効果を出せますが、高濃度のものを使用したり、単独で長期間使用したりすると思わぬデメリットもあります。
また、シミの種類によっては、そもそもハイドロキノンが効かないものもあるので注意が必要です。
この記事では、ハイドロキノンにどのような効果があるのかについて、また、より高い効果を得るための注意点を詳細に解説していきます。
これを読んでいただくことで、シミやくすみが取れ、きれいな明るい肌を手に入れることができると考えます。ぜひ、参考にしてください。
目次
1.ハイドロキノンがシミ改善効果を出す3つのメカニズム
紫外線の刺激により、皮膚の色素細胞からメラニンが作られます。
ハイドロキノンは、以下のメカニズムによりメラニンの生成をおさえます。
1-1. メラニン合成過程をストップする
ハイドロキノンは、メラニンに必要なチロシナーゼと呼ばれる酵素を抑えることでメラニンの産生を低下させます。
メラニン生成で最も重要な酵素であるチロシナーゼは、チロシンからドーパ、さらにドーパキノンが作られるのに必要です。
1-2. メラノソームを分解する
色素細胞内で、メラニンは、メラノソームの中に入った状態で作られます。
さらに、メラノソームは皮膚表面の角化細胞に送られ、シミを作ります。
ハイドロキノンは、メラノソームを分解する効果もあると考えられています。
1-3. 色素細胞を減らす
色素細胞のおおもととなる、DNAやRNA合成を抑制したり、メラノサイトを破壊する作用があると考えられています。
2. ハイドロキノンが効果を出せるシミの種類
2-1.肝斑
肝斑は、特に頬骨に沿った頬部や前額、下顎部に左右対称性にできるシミの一つです。
女性に多く見られ、紫外線や女性ホルモンの影響が原因だと考えられていいますが、発症メカニズムは現在のところ明らかになっていません。
肝斑に対して、ハイドロキノンは有効です。
ハイドロキノン2~4%を1日2回塗ります。
4%ハイドロキノンであれば、約3カ月程度塗ると薄くなってきます。
さらにトレチノイン(1日1回夜塗布)と併用するとより改善が期待できます。
2-2.炎症後色素沈着
摩擦などの刺激やケガ、また皮膚炎などの炎症の後にできるシミです。
放置しても半年程度で良くなりますが、ハイドロキノンを使うと早く改善します。
1年以上たっても改善しないものは、メラニンが深いところまで入り込んでいる状態になっていることが考えられます。その場合は、ハイドロキノンでは改善しません。医師に相談しましょう。
2-3.老人性色素斑(日光によるシミ)
日光(紫外線)にさらされた影響により発生する「シミ」です。20代から発症する事もありますが、中高年以降に主に日光がよく当たる場所に多く発生します。
大きさは様々で、色は茶褐色から黒色の色素斑が多いです。
2-4.雀卵斑(そばかす)
主として目の下から鼻にかけて発症する、褐色の小さなシミです。
幼少期から思春期に多く見られます。
紫外線で悪化する傾向にあります。
3. ハイドロキノンが効果を出せないシミの種類
3-1.ホクロやADM
日光性色素斑や肝斑は表皮にできるのに対し、ADMは表皮よりもさらに奥深い層である”真皮”に色素沈着が見られます。ADMは、紫褐色から黒褐色調のそばかすより少し大きめの色素斑で、額や頬骨部、鼻翼部、鼻根部、上眼瞼などに対称性に生じることが多いです。肝班と非常に似ており鑑別が難しいですが、上下瞼に疾患が見られたときはADMを疑います。
ホクロやADMと呼ばれるシミの一種は、病変が真皮にまでおよんでいるため、ハイドロキノンが浸透せず、効果は期待できません。
3-2.盛り上がったシミ(脂漏性角化症)
脂漏性角化症などの表皮の角質が盛り上がったものは、浸透しづらくなっているため、削皮やレーザー治療を併用する必要があります。
また、レーザー照射を行った後は、炎症後色素沈着が起こりやすいため、ハイドロキノンをあわせて使用することをお勧めします。
4.有効率と効果が出るまでの期間
ハイドロキノン軟膏の治療効果は平均1~3ヵ月かかると報告されています。
1~3ヵ月で効果が発現しない場合でも、より長期間の使用を試みる必要があることが示唆されています。
ハイドロキノン使用患者58例を調べた研究があります。(日本病院薬剤師会雑誌 44(10): 1495-1498, 2008)
58例の内訳は、男性1例,女性51例、年齢は3~72歳(平均45.4歳)でした。
また、老人性色素斑が16例(29.1%)と最も多く、次いで炎症後色素沈着15例(27.3%)、肝斑14例(25.5%)、雀卵斑3例(5.5%)でした。
効果判定の結果、著効21例、有効6例、無効24例、悪化1例であり、全52例に対する「有効」以上の有効率は51.9%でした。
効果発現までの使用期間は、効果の認められた27例の中では、3ヵ月以内が62.9%を占め、それを超える長期使用例(最長10ヵ月)においても効果が認められました。
副作用は8例(15.4%)に認められ、その内訳は、「紅斑出現」3例、「少し刺激あり」および「少しピリピリ」各2例、「痒みあり」1例でした。
副作用が出現しても、紅斑のために使用中止となった1例を除いては、大部分の症例(6例)で無処置にて使用を継続するうちに副作用が消失し、残りの1例についてはステロイド外用剤を併用して使用の継続が可能でした。また、使用中止となった1例についても、使用中止後ステロイド外用剤によって回復しました。
5.どれくらい効果が長持ちするか?
ハイドロキノン使用中止後、ただちに効果がなくなるわけではありません。
その後どれだけ紫外線を浴びるかによって、新しいシミができるまでの期間が異なります。
治療後、紫外線防止に努めることでいい状態を長く維持することができます。
ただし、基本的にはいずれの美白剤も効果が出ても継続しなければいずれは元に戻ると考え、長期的に使用することをお勧めします。
6.他のものとの効果の違い
ハイドロキノンは、様々な美白剤がある中で一番効果が強いと言われています。
ハイドロキノンは、ビタミンCの100倍の効果があると言われています。
0.01%ルミキシルを1日2回塗布した場合、4カ月で肝斑の改善効果が得られたという研究があります。この期間はハイドロキノンとそれほど変わりません。
その他、20%アゼライン酸と4%ハイドロキノンは同等の効果があるとされています。
7.院内製剤のハイドロキノン
ハイドロキノンは院内製剤として調合してる病院もあります。
ハイドロキノンは、酸化すると黄色くなり、効果が発揮できなくなります。
ビタミンC(アスコルビン酸)を組み合わせて調合することで、酸化しにくくなります。
院内処方のものは、ビタミンCなどの抗酸化剤を入れたものでは冷所保存で2~3カ月が目安です。常温だと期限は1カ月程度に下がります。ただし、使用期限内でも変色したものは使わないでください。なお、高温では急速に分解するので気をつけてください。
ただし、容器よりはチューブに充塡されたもののほうが保存性が高いです。
そのため、院内調剤よりは市販のハイドロキノン化粧品のほうが安定性に優れている可能性が高いです。
ハイドロキノンの選び方の詳細は、「シミのない美白肌!医師解説ハイドロキノンの選び方とお勧めの製品3選」をご覧ください。
8. ハイドロキノンの効果を最大限に高めるための4つの注意点
ハイドロキノンは、医師の指導のもとに適切に使用することが大事です。
また、副作用の存在を念頭に置き、異常を感じたら無理して続けない方がよいです。
さらに、病変部位以外に塗布しない、重ね塗りしないことが副作用を防ぐポイントです。
8-1.冷暗所に保管し、変色したものは使用しない
ハイドロキノンは酸素や熱で変性しやすくなるので、密封した状態で冷蔵庫に保存することをお勧めします。
使用期限を守り、使用期限内でも変色してしまった場合は使わないでください。
変性することで、有毒なベンゾキノンになり、刺激が出やすくなります。
8-2.トレチノインやレーザー治療を一緒に行う
肝斑や炎症後色素沈着などと比較して、老人性色素斑や雀卵斑(そばかす)などでは、レーザーで治療ほどの効果はみられません。
ハイドロキノン単独では、効果が出るまでだいたい3カ月以上はかかるのが普通です。
即効性を期待する場合、トレチノインやレーザー治療などとの複合治療がお勧めです。
トレチノインとハイドロキノンの併用は以下の場合に有効です。
・肝斑、炎症後色素沈着(レーザー治療後を含む)などのシミで、レーザー治療の適応がない疾患
・色調が薄く、レーザーに反応しにくいシミ
・複数のシミが混ざっており、毛穴やくすみ、ハリなどの肌質改善も同時に改善したい場合
・レーザ一治療を希望せず、自宅でのケアを希望する場合
トレチノインについては、「画像でわかるトレチノインの効果と効果を最大限高める9つの注意点」を参考にして下さい。
8-3. ピーリングを併用する
サリチル酸グリコール酸などのピーリング剤は、皮膚表面にある角層をはがすことで、皮膚の代謝を上げます。
また、美白効果も期待できます。
さらに、ハイドロキノンが浸透しやすくなります。
8-4. 日焼け止めを使う
元々シミは皮膚の細胞を紫外線から守る役割があります。
シミ治療をする際は、シワ・たるみの原因となる皮膚のダメージを避けるために日焼け止めが欠かせません。
また、シミ治療中に日焼け止めを使わないと、なかなか効果が出ないことがあります。
9. ハイドロキノンの副作用と対策
9-1.接触皮膚炎・赤み・刺激感・かゆみ
比較的頻度が高い副作用です。
ハイドロキノンが高濃度のものほど刺激が高まります。
また、投与量が多い場合に起こりやすいです。
・対策
濃度を薄くするか、アゼライン酸などの他の美白治療薬に変更してください。
また、使用に当たってはアレルギ一反応がないか、事前に一週間程度シミの部分に外用して確認しておくとよいです。(塗布後に絆創膏を貼り、24hr後に確認するパッチテストでも可)
9-2.外因性組織褐変症
もともと皮膚の色が濃い人種で、5%以上の濃度のハイドロキノンを長期間にわたり使用することで起こるとされていましたが、近年はどの人種でも起こりうるということと、低濃度のハイドロキノン(2%)、短期間(6ヶ月)でも起こりうるという報告があります。
・対策
シミ用のレーザーなどがあります。
1年以内に一旦中止して休薬期間を置き、休薬半年または1年後に治療再開の必要性を判断するとよいです。
9-3.白斑(皮膚の白抜け)
ハイドロキノンは、メラノサイト自体に対しても毒性があり、薬剤性脱色素斑などを生じる副作用が報告されています。
高濃度だと起こりやすいといわれています。
・対策
5%以上の高濃度のものを避けて下さい。
こちらにはおもな副作用を載せましたが、より詳細なハイドロキノンの副作用については、「ハイドロキノンをはじめる前に知っておきたい5つの副作用」を参考にして下さい。
まとめ
ハイドロキノンは、メラニンをおさえることでシミを改善する塗り薬です。一般的に数ヶ月の期間を要します。肝斑や炎症性色素沈着には有効ですが、シミの種類によっては効果が出せません。また、副作用もあるため、注意点を守り使うことが重要です。
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