美白剤は化粧品などに多くの種類があり、たくさんある中でどれを選べば良いのか、また、本当に効果があるのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
ハイドロキノンは、数ある美白剤の中でも最も効果が高いとされています。
また、使用されている歴史も長いため、高濃度でなければ比較的安心して使える美白剤です。
しかし実は、ハイドロキノン以外にも美白剤は多くあり、リスクや効果は様々です。
実際に正しい知識がないと、効果が見込めない商品を手にとってしまうリスクがあり、時間とお金を無駄使いしてしまいます。
ここでは、ハイドロキノンの効果や正しい商品の選び方を中心に解説いたします。
これを読んでいただくことで、シミを改善し、きれいな肌を手に入れることができると考えます。
ぜひ参考にしてみて下さい。
1.ハイドロキノンとは
ハイドロキノンは、メラニンの生成をおさえることでシミを改善する塗り薬です。
元々は医師によって処方される医薬品でしたが、2001年以降は化粧品にも配合可能となりました。
1-1.ハイドロキノンの効果
肝斑や炎症性色素沈着には効果を発揮しやすいです。
しかし、老人性色素斑(日光によるシミ)や雀卵斑(そばかす)には効果が出にくいです。
また、ホクロやADM、脂漏性角化症(盛り上がったシミ)には効果がありません。
ハイドロキノン軟膏の治療効果は平均1~3ヵ月かかると報告されています。
1~3ヵ月で効果が発現しない場合でも、より長期間の使用を試みるとよいです。
詳しくは、「ハイドロキノンの効果と効果を最大限に高めるための5つの注意点」を参考にして下さい。
1-2.ハイドロキノンの副作用
・一次刺激(赤み、ピリピリ感)・接触皮膚炎
2週間程度継続すれば自然に落ち着いてくることが多いです。
ハイドロキノンによる皮膚炎症状は、ほとんどがアレルギー性ではなく刺激性で、投与量が多いことが悪化の原因です。そのため適切な使用量や使用方法、使用回数などを守ることによって解決できることが多いです。
・白皮症・尋常性白斑(白抜け)
ハイドロキノンは、メラニンを産生する色素細胞に対する毒性があり、白抜けを生じる副作用が報告されています。高濃度のハイドロキノンを使用した場合に起こりやすいといわれています。
・指趾末端や爪甲、四肢の色素沈着
6~8%の高濃度でやや長期多量に用い、日光曝露やレゾルシノールやフェノールなどと併用した場合に発生したという報告例がありますが、使用中止で可逆的に回復したとのことです。
・外因性組織黒変症
もともと皮膚の色が濃い人種で、5%以上の濃度のハイドロキノンを長期間にわたり使用することで起こるとされていましたが、近年はどの人種でも起こりうるということと、低濃度のハイドロキノン(2%)、短期間(6ヶ月)でも起こりうるという報告があります。
・慢性的な使用によって引き起こされる副作用
色素沈着斑状、外因性組織黒変症、皮膚炎、強膜および爪の色素沈着、外因性組織黒変症部位の扁平上皮癌および皮膚および白内障の治癒能力の低下が報告されています。1年以内に一旦中止することをお勧めします。
ハイドロキノンの副作用の詳細は、「ハイドロキノンをはじめる前に知っておきたい5つの副作用」を参考にして下さい。
2.ハイドロキノンの選び方
以下の点に注意して選ぶことをお勧めします。
2-1.長期安定性がある
院内処方のものは、ビタミンCなどの抗酸化剤を入れたものでは冷所保存で2~3カ月が目安です。常温だと期限は1カ月程度に下がります。
ハイドロキノン製品の中には、比較的長期保存可能なものもあります。
2-2.副作用がおこりにくい
ハイドロキノンは酸素や熱で変性しやすいという性質があります。
変性することで、有毒なベンゾキノンになり、刺激が出やすくなります。
保存期間を延ばすとともに、製品自体の刺激が少ない工夫をしているものもあります。
2-3.製造元がしっかりしている
ハイドロキノンは、工業的に比較的に容易に製造可能なので、多くの製品があります。
しかし、安心して使用するためには、以下の観点で選ぶことをお勧めします。
・有名なメーカーが製造している
・多くの使用実績がある
・臨床試験を行っており、効果や副作用の発生率が分かっている
“個人輸入の薬剤の注意点”
海外のものは成分の純度などがきちんとしている保障はありません。厚生労働省HP「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」には以下の注意書きがあります。「国によっては、医薬品等の品質等について、我が国と同じレベルでの確認が行われていないことがあります。品質等の確認が行われていない医薬品等は、期待する効果が得られなかったり、人体に有害な物質が含まれていたりする場合があります。不衛生な場所や方法で製造されたものかもしれません。」
3.お勧めのハイドロキノン3選
前章でハイドロキノンの3つの選び方をご説明いたしました。
ここでは、その3つの条件を基準に、おすすめできる製品をご紹介いたします。
3-1. DRX HQブライトニング
ハイドロキノン単独での使用を検討するなら、DRX HQブライトニングがおすすめです。
臨床試験では、中等度以上の改善は、老人性色素斑で59.5%、炎症後色素沈着で77.8%、そばかすで50%、肝斑で100%の割合でした。
ただし、実際の写真を見ると、3カ月後の有効例とされる症例でも、ある程度シミが残っていたりします。
さらに効果を高めるためには、トレチノインの併用などをお勧めします。
なお、副作用の確率は5%と通常のハイドロキノンよりも起こりにくくなっています。
1回2滴、1日2回使用で、3mLが約20日分(価格の目安:2400円)、12mLが約80日分(価格の目安:8500円)です。
3-2.メラフェード
メラフェードは、3本セットの塗り薬です。
メラフェードTには、0.1%トレチノインと4%ハイドロキノンが入っています。
メラフェードローションはヒアルロン酸、メラフェードエマルジョンはα―アルブチンとビタミンCがそれぞれ入っています。
シミ以外に小ジワ、皮膚のハリ、ニキビも改善します。
ダウンタイムがほとんど無く治療できます。
冷暗所保存により約1年間使用可能で、長期安定性があります。
価格は、3本セット(約3カ月分)でおよそ4~5万円程度です。1か月分のトライアルセットもあります。
開始後数日~1週間すると剥離、落屑(皮膚がポロポロむける)、乾燥を感じる場合があります。 しかしこれは効いているという証拠ですが、 強い不快感(皮膚の剥離や赤み)を感じたら、治療頻度を適宜減すという対処法があり、またご自分で濃度調整もしやすいです。
数百例の臨床試験では、副作用なく使用できたという報告があります。
メラフェードの詳細は、「写真で解説!メラフェードの6つの美肌効果」を参考にして下さい。
3-3. オバジ ニューダーム クリア
トレチノインと含むオバジニューダームシステムというシミ治療セットの医薬品複数本のうちの1本です。
4%ハイドロキノンと乳酸を含むクリームです。
価格は5000円程度で、クリニックでの処方または海外からの輸入代行でも入手可能です。
4.効果を高めるハイドロキノンの使い方
ハイドロキノンを単独で使うよりも、以下の方法で効果を高めることが可能です。
4-1.トレチノインと併用する
トレチノインは古い皮膚を外に出して、新しい肌に生まれ変わらせる効果があります。
代謝を高めることで、シミが早く外に出て行きます。
トレチノインとハイドロキノンの併用により効果が高まります。
トレチノインの詳細は、「画像でわかるトレチノインの効果と効果を最大限高める9つの注意点」をご覧ください。
4-2.ケミカルピーリングと併用
ケミカルピーリングは、余分な角質を除去することで、肌をなめらかにしたり、毛穴のつまりを改善したりする効果などがあります。
また、代謝が上がり、それ自体でも肌が白くなる効果があります。
ケミカルピーリングで余分な角質が除去したあとにハイドロキノンを使用すると、浸透しやすくなります。
5.ハイドロキノン以外の美白治療薬
ここでご紹介する美白成分は全て市販品に含まれているものです。
ただし、市販品には濃度規制があり、医師によって処方されるものの方が一般的に濃度が高いことが多いです。
さて、シミができるまでの過程として、まず紫外線を浴びることで皮膚表面にあるケラチノサイトよりプロスタグランジンなどが作られ、それが色素細胞を活性化させます。
さらに、色素細胞内でメラニンが作られる過程には以下のようないくつかの酵素反応が含まれます。
美白剤はこれらの酵素反応を妨げたり、これら一連の酸化反応を防いだりします。
5-1.トランサミン(トラネキサム酸)
主に肝斑の治療に用いられる飲み薬ですが、化粧品の成分としても用いられることがあります。
炎症をおこすプロスタグランジンという成分の生成を阻害することにより、色素細胞からのメラニン産生を刺激するシグナル伝達を抑制します。
その他、プロスタグラジンなどをおさえる効果もあります。
肝斑の詳細については、「肝斑とは?治療で失敗しないために知っておくべき5つのこと」を参考にして下さい。
5-2.アルブチン
ハイドロキノンと構造が似ている物質です。
メラニンのもととなるチロシナーゼ以外にTRP-1と呼ばれる酵素活性をおさえる効果があると言われています。
そのほか、抗酸化作用、抗炎症作用があります。
ハイドロキノンの欠点として、空気に触れることで酸化して、効果がなくなってしまったり、刺激症状が出やすくなるという特徴があります。
その点、アルブチンは、ハイドロキノンを酸化にくくした化学物質であり、皮膚の刺激症状が生じにくいという利点があります。
ただし、ハイドロキノンよりは効果は劣ります。
7%のアルブチン製剤を3カ月間塗布した臨床試験によると、有効またはやや有効であった割合は、肝斑で50%、老人性色素斑で81%、炎症後色素沈着で77%でした。
副作用の確率は低いですが、接触皮膚炎の報告があります。
5-3. コウジ酸
コウジ酸は麹菌の発酵により生成される成分です。
メラニンを生成するチロシナーゼには、銅が含まれており、コウジ酸はチロシナーゼの銅イオンに結合し、作用を妨げます。
チロシナーゼ以外にも、メラニン生成過程に必要な酵素であるTRP-2の不活もおさえます。
1%コウジ酸クリームを18カ月前後塗布した結果、肝斑の42例のうち88.1%に有効であったという報告があります。
また、ハイドロキノンよりも赤みや炎症などの副作用が少ない特徴があります。
ただし、接触性皮膚炎の報告があります。
ハイドロキノン、アルブチン、コウジ酸の類似点
これら3つの共通点は、構造的にベンゼン核にOHを1つ持つ点です。
これは、チロシン(メラニンを作るもととなる酵素であるチロジナーゼの基質)とも共通しています。このOHを中心にしてチロジナーゼ反応が起こります。
これら3つの化合物は、チロシンと競合することで酵素反応を阻害します。
5-4. 4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)
チロシナーゼの活性阻害効果があり、その他、TRP-1活性阻害もあります。
0.3%ルシノール配合美容液は肝斑患者に1日2回24週間使用した結果、やや有用以上の効果が認められた割合は83.9%でした。
ハイドロキノンより細胞毒性が低い特徴がありますが、接触性皮膚炎の報告があります。
5-5. ビタミンC(アスコルビン酸)
チロシナーゼの活性をおさえる作用以外に、すでにできてしまったメラニン自体の色を薄くする作用もあると言われています。
欠点として、不安定ですぐに壊れやすいため、グルコシドやリン酸エステル塩などの誘導体として配合されることが多いです。
なお、チロシナーゼ反応をおさえる役割を終えたビタミンCは、代謝され、崩壊します。
したがって、皮膚においてメラニン生成を十分におさえるためには、できるだけ多くの量のビタミンCを絶えず色素細胞内に取り込ませる必要があります。
そのため、塗り薬として皮膚の外からビタミンCを取り入れる場合は、できるだけ頻回に塗布した方が効果的と考えられます。
また、ビタミンCと抗酸化作用があるビタミンEは、それぞれを単独で使用するより有効です。
ビタミンCとE配合剤は肝斑を軽度以上42~69%の確率で改善します。
ただし、ハイドロキノンよりはチロシナーゼ活性をおさえる作用は弱く、60~100分の1とも言われています。
なお、ビタミンCは、クリニックで行うイオン導入によりより多くの量を皮膚に入れることができます。
5-6.アゼライン酸
20%アゼライン酸は2%ハイドロキノンよりも改善率が高く、4%ハイドロキノンとの比較では同等の効果があります。
またアゼライン酸もハイドロキノンと同様にトレチノインの併用療法によりアゼライン酸単独よりも改善率が高くなります。
かゆみ、赤み、刺激感などの副作用が出る確率は比較的高く、47~70%という報告があります。
これはハイドロキノンの副作用の確率が15.4%だったという報告もあるので、比較的高い確率です。
6.美白剤のまとめ
前章の美白剤の効果と安全性をまとめると以下の通りです。
効果 |
安全性 |
|
ハイドロキノン |
◎ |
○ |
トランサミン |
○ |
◎ |
アルブチン |
○ |
◎ |
コウジ酸 |
○ |
◎ |
ルシノール |
○ |
◎ |
ビタミンC |
△ |
◎ |
アゼライン酸 |
◎ |
△ |
6-1.おすすめの美白剤はハイドロキノン
効果と副作用のバランスを考えると、ハイドロキノンが一番効果的です。
副作用も全くないわけではありませんが、気をつけて使用することで、リスクを減らすことが出来ることが多いです。
6-2. ハイドロキノンがどうしても合わない場合はアゼライン酸
ハイドロキノンでかぶれる方や、どうしてもハイドロキノンのリスクが気になる方は、副作用が出にくいものを使用するのがおすすめです。
トランサミン、アルブチン、コウジ酸、ルシノール、ビタミンCを試してみてください。
リスクを極力少なくするためには、パッチテスト(少量塗布後に絆創膏を24hr後にチェックする)や試し塗りを7週間程度、目立たない部位で行うとよいです。
ハイドロキノンよりも強力な「ハイドロキノンモノベンジルエーテル」について
「ハイドロキノンモノベンジルエーテル」は、強い漂白作用があり、尋常性白斑の治療に用いられます。
ハイドロキノンモノベンジルエーテルは1930年代後半にゴムの酸化防止剤として使用され、当時ゴム製手袋による白斑が問題となっていました。
1950年代前半までは肝斑や老人性色素斑などのシミ治療薬として使われていた時期もありましたが、作用が強すぎるため、白抜け(白斑)になってしまうという副作用がありました。
その後、尋常性白斑の色素沈着症に対する脱色素療法に用いられるようになりました。
ハイドロキノンモノベンジルエーテル外用を20%濃度で1日2回行うと、2~3ヶ月で脱色が始まり、90~95%の割合で1年以内に完全に脱色できるとされているが、それは不可逆的な作用です。
現在日本では、医師の処方でのみ使用可能で、化粧品として配合することは禁止されています。
まとめ
美白剤には様々な種類がありますが、その中でもハイドロキノンが一番効果的です。しかし、ハイドロキノンには様々なリスクもあります。しかし、注意点に気をつけて安全性の高いハイドロキノン製品を選ぶことで、より安全に美白を手に入れることができると考えます。
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メラフェード 学術参考資料
厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html