眉間のシワが嫌だけど、ボトックスで治すべきかどうか迷っている、あるいは他の方法を探している方は多いのではないでしょうか?
実際、ボトックスは筋肉を動きにくくして、シワを治す治療法で、実際に眉間のシワを改善する治療手段として非常に有効な手段です。
しかし、良い面だけではありません。ボトックス治療にもリスクがあるので注意が必要です。
リスクへの理解なくして治療してしまい、「無駄なお金を使ってしまった。」「別の方法で治療すべきだった。」と思われる方がいるのも事実です。
また、実際に治療を行う場合も、ちょっとした意識と行動で、効果に圧倒的な差が出ることもあります。
ここでは、後悔のない、満足する治療を受けていただくために、眉間のシワをボトックスで治療する場合の効果とリスクをご説明するとともに、どのようにリスクを回避していくべきか、さらに、治療効果を高めるための行動について、詳細にお伝えします。
すべてお読みいただければ、眉間のシワをボトックスで解消すべきかどうか、満足できる治療を受けるための正しい知識を身につけて頂けます。
ぜひ、参考にしてください。
目次
1.眉間にシワができるメカニズム
1-1. 皺眉筋(すうびきん)の動き
眉間の縦ジワの原因となる筋肉は、皺眉筋(すうびきん)と呼ばれる筋肉(図の黄色の丸)です。
収縮すると縦ジワが寄ります。
1-2.皮膚が薄くなる
紫外線や加齢によりコラーゲンが減少し、ハリが低下します。
皮膚が薄くなると、簡単にシワが寄るようになります。
また、何度も動かしているうちにシワが癖になってしまいます。
鼻根部(鼻の根元)に鼻根筋という筋肉があります。
これも同時に収縮すると眉毛の内側は下に引っ張られます。
しかめっ面をした際に眉間から鼻根部にかけてシワが寄りやすいです。
2.ボトックスとは
ボトックスは、A型ボツリヌス菌毒素の薬の商品名です。(A型ボツリヌス菌毒素にはA~Gのタイプがあります)
A型ボツリヌス菌毒素の製剤には、ボトックス以外にも様々な種類があります。
例えば、ボトックスよりもディスポートというボツリヌス菌毒素の方が拡散しやすいと言われています。
あまり拡散しやすいと、ターゲットなる筋肉以外に思わぬ筋肉の麻痺が生じることがあります。
ボトックスの作用機序は、神経と筋肉の間のアセチルコリンという物質を阻害することで、神経と筋肉の伝達がうまくいかなくなり、筋肉が弛緩して運動麻痺をきたします。
ボトックスによる眉間の治療例の症例写真です。
ボトックスは、筋肉に作用する治療なので、安静時に見られるシワは完全には無くならないことがあるので注意が必要です。
その場合は残ったシワをヒアルロン酸やグロースファクターで治療することが可能です。
2-1.ボトックスの持続期間
ボツリヌストキシンによる効果発現は、注射後2~3日に現れ、2~3週間で最大となります。
効果の持続期間は3~4カ月で、6カ月以内に効果は消失します。
効果が3~4ヵ月しか続かないのは、この間に神経の枝が新生するためです。
3.眉間のボトックスの治療手順
STEP1.
安静時とシワを作った状態を写真撮影します。
これは治療後の経過を比較するためです。
STEP2.
注入部位をマーキング・・・実際の注入前に表情筋や重要なポイントをマーキングします。
STEP3.
必要に応じて麻酔(吸入麻酔、注射による麻酔、塗り麻酔)
アイス(氷)パックによる冷却
STEP4.
注射・・・針の刺入方向は目に入らないように頭側に向けて打ちます。
また、雛眉筋の内側から外側に向かうにつれて浅い層に注射します。
針を刺入する深さも重要で、表情筋を貫通して骨に達すると、眼球側に注入液の影響が及ぶことがあるため注意が必要です。
STEP5.
止血・・・皮下出血の予防のため、注射部位を軽く圧迫します。
3~5分くらいで止まります。
メイクや洗顔は1時間くらいたてば可能です。
帰られる際に走ったり、力を入れたりしないようにしましょう。内出血は後から出ることもあります。
4.眉間のボトックスの治療費
料金は、製品にもよりますが1万円~5万円程度です。
治療費は使っている製剤などによっても異なります。
韓国製のものは、安価(半額程度)ですが、質の問題を考えると、事前にどこのものを使用されているかを確認した方がよいです。お勧めはアラガン社のボトックスで、厚生労働省の認可を取得しています。
麻酔の料金が別料金になっているかどうかを事前に確認しておいた方がよいです。
麻酔には吸入麻酔、注射による麻酔、塗り麻酔があり、クリニックによって異なります。
痛みは麻酔をしっかりしないと比較的神経が集まっている場所なので、そのまま打つと痛いです。
氷で冷やしながらだけで行うクリニックも多いです。
5.ボトックスによる眉間のシワ治療のリスクと副作用
ボトックスは比較的安全で元に戻ることが可能な治療ですが、リスクはゼロではありません。
治療を受ける前にリスクや副作用を確認しておきましょう。
5-1.内出血のリスクがある
皮下出血のリスクはどうしても血管がどこにあるか外側からは分らないので避けられません。
リスクをできるだけ軽減するために細い注射針を使用する方法がとられます。
その他、飲酒・運動・サウナ・温泉など体が温まるようなことは、1週間程度控えた方が内出血予防にはベストです。
5-2.効きすぎて目が開きづらくなることがある
眉間部では前頭筋と呼ばれる眉毛を挙げる筋肉が微妙に重なり合っています。
中央では雛眉筋は深い位置にあり、外側では深い位置にあります。
投与量や注射の深さの加減がうまくいかないと、前頭筋まで効いてしまい、まぶたが重くなることがあります。
その他、眉毛内側が下がったり眉毛外側が上がってしまうリスクがあります。
前頭筋になるべく作用させないようにするためには、雛眉筋内側では浅い部位への投与や高すぎる位置への投与を避け、眉毛外側部位への注射を避けることが重要です。
5-3.表情が固くなったり、疲れた印象になることがある
表情が作れず、不自然な印象になることがあります。
また、眉毛がかなり下がっている方で、眉毛が動かなくなったり、眉毛の内側が下にさがったりすることで、疲れた印象になることがあります。
一度ボトックスを打ってしまうと、数ヶ月は効果がなくなるまで待つしかありません。
もしこのような合併症が起こった場合、その他の治療法を検討した方がよいです。
5-4.ボトックス治療後に逆に眉間のたるみが目立つことがある
眉毛が重い感じの方では、眉間の治療によって眉毛の内側のたるみが強調されることがあります。
このような場合、ボトックスが向いていない可能性があるので、他の治療法を検討しましょう。
5-5.頻度の低い副作用もある
重篤なもので、ショック、アナフィラキシー様症状、血清病、眼障害、重篤な角膜露出、持続性上皮欠損、角膜潰瘍、角膜穿孔、嚥下障害(頻度不明)、呼吸障害、痙攣発作などがおこりえます。
このうち呼吸障害は0.02%で、その他は頻度不明です。
その他、以下のような副作用が報告されています。
ただし、頻度的には低いので、起こりうるものとして認識する程度でもいいと思います。
過剰な筋弛緩作用
1~5%未満・・・眼瞼下垂
1%未満・・・兎眼、顔面麻痺、局所性筋力低下(頸部筋脱力、口角下垂等)
頻度不明・・・眼瞼外反、眼瞼内反、閉瞼不全
眼
1~5%未満・・・複視、霧視(感)、羞明、眼脂、流涙、眼痛
頻度不明・・・眼の刺激、斜視、結膜炎、眼の乾燥感、角膜炎、角膜糜爛、視力低下
皮膚
1~5%未満・・・発疹、そう痒感、紅斑、脱毛(睫毛眉毛脱落を含む)
頻度不明・・・乾癬様皮疹、多形紅斑
注射部位
1~5%未満・・・注射部腫脹、注射部出血斑、注射部熱感、注射部位疼痛
頻度不明・・・注射部ひきつり感、注射部感染、近隣筋の疼痛及び緊張亢進
血液
1~5%未満・・・白血球減少
頻度不明・・・血小板減少
消化器
1~5%未満・・・嘔気、下痢、口内乾燥
頻度不明・・・嚥下障害、食欲不振、嘔吐、腹痛
精神神経系
1~5%未満・・・頭痛
頻度不明・・・めまい、失神、感覚異常 神経根障害、しびれ感
その他
1~5%未満・・・顔面痛、発熱、CK(CPK)上昇、感冒様症状
頻度不明・・・脱力(感)、倦怠(感)、耳鳴、聴力低下、発汗、脱神経性萎縮/筋萎縮、筋肉痛、肝機能検査異常
6.ボトックスによる眉間のシワ治療の注意点
ここでは事前に知っておくべき注意すべき点をご紹介いたします。
6-1.定期的なメンテナンスが必要です
ボトックスの効果は多少個人差があり、3~4 ヵ月に一度行えばよい方もいれば、1年持つ方もいます。
効果が切れてくると徐々にシワが戻ってくるので、定期的に打つ必要があります。
6-2.効かないこと、効かなくなることがある
ごくまれに最初から効果がない方もまれにいます(一次耐性)。
また、何度も治療をするうちに、徐々に効かなくなってくる方もいます(二次耐性)。これはボツリヌス毒素に対する抗体が体内で産生されるためです。抗体の産生を防止するには、治療の間隔は3ヶ月以上空けたほうがよいです。
抗体は1回の治療でできてしまうこともありますが、その場合は毒素のタイプ(製品)を変えることで治療を継続できます。
6-3.神経疾患がある場合や妊娠中は治療禁止
重症筋無力症やLambert-Eaton症候群がある方は、筋力低下が悪化するリスクがあり、治療を受けられません。
また、逆にボトックスを投与後に筋力低下が生じてしまった場合は、上記の疾患の可能性がありますので、医師に相談しましょう。
ボトックス治療が出来ない方(禁忌)は以下の通りです
1)絶対的禁忌
①全身性の神経筋接合部の障害をもつ疾患
(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群筋、萎縮性側索硬化症など)
②妊婦または妊娠している可能性のある女性
③ボツリヌストキシンまたは添加されている成分に対して過敏症の既往のある者
④その他のボツリヌストキシンによる治療を受けている者(相互作用による副作用増強のおそれ)
2)相対的禁忌
①筋弛緩剤および筋弛緩作用を有する薬剤を投与中の患者
②慢性の呼吸障害のある患者
③重篤な筋力低下あるいは萎縮がある患者
④閉塞隅角緑内障のある患者またはその素因(狭隅角など)のある患者
6-4.シワを放置しすぎると完全には治らないことがある
皮膚がたるんで下垂している場合や、深くなりすぎたシワは完全には改善しないことがあります。
シワが深くなりすぎている場合、程度によってはヒアルロン酸やグロースファクターなどのその他の治療法を併用療法することで改善可能です。
6-5.治療直後の車の運転は控える
投与後に脱力感、筋力低下、めまい、視力低下があらわれることがあります。
車の運転等などは控えましょう。
7.ボトックスによる眉間のシワ治療の効果を高めるためのポイント
ここではボトックスを打つ打たないに関わらず、眉間のシワを予防する、あるいは治療効果を高めるポイントをご紹介いたします。
7-1.紫外線防止(日焼け止めやサングラス)
前述のように、皮膚の老化でシワができやすくなります。
眉間にも日焼け止めを塗ると長期的な予防効果になります。
日焼け止めはSPF30程度のもので十分です。
できれば、日中は屋内でも塗るようにすると効果が高まります。
7-2.時々眉間の筋肉のストレッチをする
ストレスなどが続くと、皺眉筋が常に緊張した状態になります。(強直性痙攣)
交感神経の刺激により肩凝り、頭痛、睡眠障害、冷え症、顎関節症などの原因にもなることがあります。
常に眉間にシワが寄っている方は、眉間の筋肉の収縮をゆるめるように矢印の方向へストレッチをします。
30秒~1分程度でよいので、1日数回程度行ってください。
鏡を見ててシワが寄っているようでしたら続けてみて下さい。
7-3.あまり思いつめない/ 時々ストレスを発散する
精神的なストレスで眉間に無意識にシワが寄ってしまいます。
あまり思いつめたりすることで悪化します。
ストレス発散も眉間のシワの改善にはよいでしょう。
7-4.皮膚を乾燥させない/保湿する
皮膚が乾燥するとシワの原因になります。
保湿をしたり、冬場は加湿器を使ったりすることも有効です。
保湿は高級なものは必要なく、少量のワセリンで十分です。
それでも良くならない場合は治療が必要になります。
7-5.額にシワが多い場合は、額もボトックス治療をした方がよい
額にシワが多い方は額をよく動かす傾向にあります。
その場合は、眉聞の縦ジワだけ治療しすると、眉毛の外側がつり上げって、バランスが悪くなることがあります。
額を寄せる癖がある方は、前額部全体の治療をするときれいに仕上がることがあります。
ただし眼瞼下垂と呼ばれるまぶたが上げにくい症状がある場合は、額のボトックスにより目が開けにくくなることがあります。
事前に医師に眼瞼下垂の有無について相談して下さい。
8.ボトックス以外の眉間のシワ治療
ボトックスはどうしても違和感があったり、表情が固くなるということで敬遠する方も多いです。
ここではボトックス以外の眉間のシワの治療法をご紹介します。
8-1.グロースファクター注射
グロースファクターは、注射による治療で、皮膚のコラーゲンを増やすことで皮膚のハリを出します。
動かしてもシワが寄りづらくなります。
グロースファクターは、ボトックスのように筋肉の動きを抑えるものではないので、動きに制限はないため、仕上がりも自然な印象です。
グロースファクターは、効果が出るのに3~6カ月かかり、速効性はあまりありません。
しかし1回治療効果が出ると、少なくとも数年以上はいい状態を維持できます。
詳しくは、「グロースファクター|これから受ける方が必ず知っておきたい全知識」をご覧ください。
グロースファクター治療例(1)
施術前・・・元々力を入れなければシワはありません。
6か月後・・・一見それほど変化はありません。
次に眉間にシワ寄せをした状態を比較します。
施術前・・・眉間に力いっぱいシワを寄せた状態です。
6か月後・・・力を入れてもシワが寄りづらくなりました。
グロースファクター治療例(2)
施術前・・・力を入れていない状態ですが、微妙にシワが浮き出ています。
2ヵ月後・・・皮膚のハリが出て、ピーンとなった印象です。
施術前・・・眉間にシワを寄せた状態です。
2ヵ月後・・・同じくシワを寄せた状態です。シワが寄りづらくなっています。
深いシワをしっかり治す方法として、グロースファクターによる根本的治療とボトックスによる速効性のある「アイロンがけ」を行うと、きれいに仕上がります。
グロースファクター+ボトックスの治療例です。
施術前・・・眉間に2本縦ジワがあります。
ボトックスと同時にグロースファクター注入療法も行いました。
3カ月後・・・両者の相乗効果が得られています。
8-2.ヒアルロン酸注射・コラーゲン注射
シワのくぼみに沿って、充填するように入れていきます。 浅すぎず、深すぎずの深さに打つことが重要です。 また、ボトックスでシワが残ったときに追加治療として行うこともあります。
特にシワが非常に浅い場合はやわらかめのヒアルロン酸やコラーゲンを浅めの層に打つ必要があります。
詳しくは、「険しい表情を治したい!眉間のシワを取る方法の料金と仕上がりの比較」をご覧下さい。
8-3.トレチノイン塗布
トレチノインは古い皮膚を外に出して、新しい肌に入れ替える効果があります。
その過程で小ジワが改善したりします。
目尻の症例写真ですが、1ヶ月の塗布で小ジワが改善しています。
メラフェードはハイドロキノンとトレチノインによる塗り薬で、シミの改善効果もあります。
価格は5万円前後で3ヶ月程度持ちます。
9.ボトックスとその他の治療法の比較
9-1.ボトックスとグロースファクターの比較
「私の場合、グロースファクターよりボトックスのほうが良いでしょうか?」と思われる方がいるかもしれません。
結論から言うと、あまりご不安でしたら、ボトックスが良いと思います。
グロースファクターは、基本は元には戻せませんが、ボトックスは半年程度で元に戻ります。
しかし、逆に言うと半年に1回打ち続けないと維持できません。
また、予算についてですが、グロースファクターによる眉間治療は、クリニックにもよりますが、3~14万円程度ですが、ボトックス眉間は1~5万円前後です。
仮にそれぞれ14万円、5万円とすると、1年半でほぼトントンになる計算で、それ以上になるとグロースファクターの方がお得です。
なお、グロースファクターは少なくとも数年以上は効果が持続し、ボトックスのように表情が固くなることはないため、施術後はより快適です。
9-2.ボトックスとヒアルロン酸の比較
眉間を動かす癖が強い方はボトックスを行うことで、筋肉に作用するためシワそのものを作る力を弱めることができます。
それでも残ったシワにはヒアルロン酸を追加する方法があります。
逆にヒアルロン酸単独ではあまり眉間のシワ治療は一般的ではありません。
さらに、眉間には血管が多く走っているため、あまりヒアルロン酸を打ちすぎると血管を詰まらせる(塞栓)のリスクが高まり、額の皮膚が壊死する危険性があります。
そのため、ボトックスかヒアルロン酸かで迷われている方は、まずはボトックスを行うことをお勧めします。
まとめ
美容医療に副作用のない完全無欠な方法はありません。
ボトックスも例外ではなく、副作用やデメリットは全くゼロではないですが、比較的安全で、元に戻ることができる治療法として世界で広く行われています。
眉間のしわが気になる方で、初めて美容整形を受ける方は、比較的に気軽にできるボトックスはお勧めの治療方法です。
シワが気になり始めた方は、ボトックス以外の追加の治療が必要にならないよう、シワが深くなりすぎないうちに早めに行ったほうがよいです。
参考文献
Extert opin Pharmacother, 8 1059-1072. 2007
ボツリヌストキシン・ハンドブック. 克誠堂出版.2006年
Journal of Cosmetic Dermatology, 15, 540—548.2016
ボトックスビスタ注用50単位添付文書.アラガン社.2016