塩分をとりすぎないように気をつけているものの、むくみや高血が高めといった悩みからなかなか脱出できない方は多いのではないでしょうか?
塩分は、味覚の一つを構成する要素で、濃い目の味が習慣になるとついついとり塩分を過ぎになってしまいがちです。
実は、塩分を減らしながらもおいしく食事を頂く方法は存在します。
また気をつけるべき食事の選び方もあり、日ごろ気をつけることで、むくみが取れ、顔がすっきりとするだけではなく、血圧を減らし、生活習慣病の予防も行うことができます。
ここでは、減塩をするためのポイントと、おすすめの調味料、さらに具体的なレシピまでご紹介いたします。
ぜひ参考にしてみて下さい。
目次
1.食塩について
食塩は、ナトリウム(Na)と塩素(Cl)からなり、塩化ナトリウム(NaCl)と呼ばれます。
食塩は、必須ミネラルのひとつであるナトリウムを含み、これらは体内の水分調節に重要な役割を果たしています。
実は通常の食事にて、ナトリウムを十分補うことができます。
なぜなら、私たちは、食塩(塩化ナトリウム)を含んだ食事や食塩を含んだ調味料により、ナトリウムのほとんどを摂取しているためです。
2.減塩による健康への影響
食塩の摂り過ぎによる血圧上昇や、減塩により血圧降下が見られることが、多くの研究より明らかになっています。
欧米で実施された大規模臨床試験の結果では、食塩を少なくとも1日6 g前半までに摂取することが血圧降下には必要であると明らかになっています。
そのため、世界の主要な高血圧治療ガイドラインの減塩目標レベルは、全て1日6 g未満を下回っています。
イギリスでは、食品への塩分の規制が2011年に緩和された後に、塩分摂取量の減少が鈍化し、心血管障害や胃がんが増えたという報告があります。(詳細)
3.食塩は1日にどれくらいまで減らすべき?
・世界保健機構(WHO)の基準
世界保健機構(WHO)による2012年のガイドラインでは、成人の食塩摂取量を5 g/日未満とするようにすすめています。
・日本の基準
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、成人男性で8.0 g/日未満、成人女性で7.0 g/日未満と設定しています。
「高血圧治療ガイドライン2014)」では、成人の食塩摂取量の目標値を1日6 g/日未満と設定しています。
4.日本人の1日の食塩摂取量の現状
平成27年国民健康・栄養調査では、成人の食塩摂取量の平均値は10.0 g/日でした。
男女別では、10年間で有意に減少しているものの、男性11.0 g、女性9.2 gであり、上記に見られるような食事摂取基準の目標量には達していません。
年次 |
総数 |
男性 |
女性 |
平成17年 |
11.5 |
12.4 |
10.7 |
平成18年 |
11.2 |
12.2 |
10.5 |
平成19年 |
11.1 |
12 |
10.3 |
平成20年 |
10.9 |
11.9 |
10.1 |
平成21年 |
10.7 |
11.6 |
9.9 |
平成22年 |
10.6 |
11.4 |
9.8 |
平成23年 |
10.4 |
11.4 |
9.6 |
平成24年 |
10.4 |
11.3 |
9.6 |
平成25年 |
10.2 |
11.1 |
9.4 |
平成26年 |
10 |
10.9 |
9.2 |
平成27年 |
10 |
11 |
9.2 |
食塩摂取量の平均値の年次推移(20歳以上)(平成17~27年)(g/日)
5.食塩コントロールの重要性について
食塩の過剰摂取は体液量を増加させて高血圧をひき起こし、心臓への負担を大きくすることもあります。
その他、顔などのむくみの原因にもなります。
これは、体内の血液中のナトリウム濃度は、身体の調節機能により常に一定濃度に保たれているため、食塩を摂取した際に体内にNa が入ると、調節機能が働き、水分を体内に貯留して血液中のNa 濃度を調整するためです。
6.食塩のコントロール方法について
食塩摂取量をコントロールするには、食塩が多い食品や料理を把握し、料理を薄味にすることで食塩の摂取量を減らすことが重要です。
6-1. 食塩量の少ない調味料を使う
日本人の食事は海外に比べ、塩味でおいしさを出す傾向があるため、日本人の食塩摂取量は多めになる傾向があります。
しかし、実は薄味でもおいしく調理することはできます。
そのためには、まず調味料に含有する食塩量を把握し、計量して使用することが必要です。
・調味料の食塩量
食塩摂取量は調味料に多く含まれるため、計量スプーンを利用して、調味料を計る習慣をつけることが重要です。
調味料の種類により、計量スプーン容量と重量が異なるものもありますが、まずは、1mL(ミニスプーン)、5mL(小さじ)、15mL(大さじ)の計量スプーンを揃えましょう。
食塩1g に相当する各種調味料 |
||
食品 |
重量 |
計量スプーン |
食 塩 |
1g |
小さじ6分の1 |
こいくちしょうゆ |
7g |
小さじ1強 |
うすくちしょうゆ |
6g |
小さじ1 |
淡色辛みそ |
8g |
小さじ2 |
ウスターソース |
12g |
大さじ2 |
ケチャップ |
30g |
大さじ4と2分の1 |
マヨネーズ |
56g |
小さじ1と3分の1 |
また、減塩タイプの調味料を利用することで、食塩摂取量を制限することも可能となります。
しかしながら、減塩タイプと謳われる調味料の場合、減塩表示において、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換えていることもあるため、カリウム量を把握して購入することも重要です。
・減塩調味料の例
全病食 減塩みそ 750g 540円 Amazon
食塩量を約50%カット。みそ汁1杯(お湯160ml、みそ16g)に含まれる食塩は0.9g。
笛木醤油 金笛 減塩醤油 600ml ¥ 1,126 Amazon
創業220余年の伝統的手法により、丸大豆、小麦、天日塩のみを原料とし、旨味成分はそのままで、食塩を50%カットした風味豊かな醤油です。 保存料等は使用していません。
6-2.食塩量の多い食品や料理を控える
効果的に塩分の摂取量を減らすには、食塩を多く含む食品や食材をできるだけ避けるのが効果的です。
「塩分控えめ」や「低塩」タイプの加工食品もおすすめです。
ただし、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換えていることもあるため、カリウム量を把握して購入することが重要です。
食品を選ぶ際、加工食品の包装容器に原材料や栄養成分が表示されているので、自分で表示を確認する習慣をつけましょう。
栄養成分値(エネルギー、蛋白質、脂質、炭水化物、糖質、食物繊維、ナトリウム等の値)の表示が義務づけられているため、併せて食塩量や炭水化物量を確認する習慣もつけましょう。
食塩量は、ナトリウム(Na)が表示されている場合、下記の換算式で算出可能です。
[食塩量(g)= Na(mg)× 2.54 ÷ 1,000]
ここでは、具体的に気をつけるべき食品・料理について紹介いたします。
・食塩を多く含む食品
塩蔵品(漬物や明太子等)や加工食品(干物、竹輪やハム等)、調理済み食品、インスタント食品は食塩が多く含まれています。これらを利用する場合、包装容器で食塩量を確認することを習慣つけましょう。
生鮮食品を利用することにより、食塩摂取量をコントロールすることができます。
・加工食品・・・レトルト食品や冷凍食品、チルド食品、肉・魚加工食品(ハム・ソーセージ・かまぼこ等)、缶詰、菓子、嗜好飲料などを指します。加工食品は、保存性が高く、そのまま、あるいは簡単な調理で食べることができる便利な食品です。しかし、加工食品の加工方法において、古くから燻製や乾燥等のほか、塩分濃度や砂糖を上げる方法もとられているため、これらは生鮮食品に比べて「食塩」や「糖質」の量が高い傾向があり、加工食品を利用する際には注意が必要です。
・塩蔵品・・・保存性を高めた代表的な食品を塩蔵品(漬物、塩辛、塩鮭、めんたいこ等)があります。
これらは、塩分濃度を高くすることで微生物の生育を抑制しています。
・塩漬(えんせき)・・・塩漬(食塩や発色剤、砂糖、香辛料などに漬け込む)といわれる処理を行った肉加工品(ハムやベーコン等)も食塩を多く含みます。また、練り製品(かまぼこ、ちくわ、チーズ等)も食塩を混ぜて保存性を高めています。
・食塩を多く含む料理
汁物(スープやみそ汁1 杯には1 ~ 2g 食塩含有)は1日1杯まで、また麺類のスープは飲まないように気をつけるとよいでしょう。
外食料理も食塩量が多い傾向にあるため、利用頻度をなるべく少なくしましょう。
外食料理のメニュー選びにおいては、丼物等の調味料で既に味つけされたメニューより食塩量を個人で調整できる定食等のメニューを選択する工夫も必要です。
もしくは、注文時に薄味にして欲しい旨を一言伝えるのも良いかもしれません。
各食品50gに含まれる食塩量 |
|
食品 |
食塩量(g) |
梅干し |
11 |
粒うに |
4 |
いかの塩辛 |
3.5 |
のりつくだ煮 |
3 |
明太子 |
2.8 |
たくあん |
2.3 |
しらす干し |
2 |
いくら |
1.3 |
かまぼこ |
1.3 |
ロースハム |
1.3 |
牛肉味つけ缶詰 |
1.2 |
焼き竹輪 |
1.1 |
キムチ |
1 |
ベーコン |
1 |
ウインナー |
1 |
ほっけの開き |
0.9 |
調理済み食品・インスタント食品の食塩量 |
||
食品・料理 |
目安量 |
食塩量 |
インスタントラーメン |
1袋 |
5.9g |
カップラーメン |
1食 |
5.1g |
カップ焼きそば |
1食 |
4.3g |
レトルトカレー |
1袋 |
2.2g |
冷凍ぎょうざ |
6個 |
1.4g |
粉末クリームスープ |
1袋 |
1.2g |
調理済みコロッケ |
1個 |
0.4g |
外食に含まれる食塩量 |
||
食品・料理 |
目安量 |
食塩量 |
ラーメン |
1人前 |
5.5g |
かけうどん |
1人前 |
4.7g |
握り寿司 |
1人前 |
3.7g |
かつ丼 |
1人前 |
3.2g |
ミートスパゲッティ |
1人前 |
3.2g |
うな重 |
1人前 |
2.8g |
ざるそば |
1人前 |
2.8g |
ハンバーガー |
1個 |
1.6g |
6-3.味つけや調理、食べ方を工夫する
酸味(酢やレモン、ゆず等)や辛味(唐辛子等)、旨み成分(かつおやいりこだし等)、風味(マーガリンやバター等)、焦げの香ばしさ等を活用することにより、薄味でも食事を楽しむことできます。
ソースや醤油を付けて食べる料理(フライや天ぷら等)は、直接それらを料理にかけるのではなく、付けて食べるようにすると食塩摂取量を減らすことができます。
6-4.みそ汁は具だくさんにする
みそ汁は野菜や海藻、きのこ類などを用いて具だくさんにすると、栄養のバランスがよくなると同時に汁の摂取量が減るため減塩できます。意識して心がけましょう。
一般的に、みそ汁1 杯で約1.2g の食塩量となります。汁ものは1 日1 杯程度の摂取とするようにしましょう。
6-5. ナトリウム排泄のためにカリウムを摂取する
カリウムは体内の余分なナトリウムを排泄する作用があります。
カリウムは、野菜、海藻類、きのこ類、くだものなどに多く含まれています。
それらを積極的にとるようにしましょう。
7.おすすめの減塩レシピ
塩分少なめのレシピの一例です。
醤油を使用する場合は、食塩を50%できる減塩醤油を使うとよいです。
参考にしてみて下さい。
7-1. きんぴらごぼう
ごぼうのうま味とごまの風味で塩分が少ないメニューです。
材料
ごぼう:35g、にんじん:20g、サラダ油:2g、酒:2g、本みりん:2g、こいくちしょうゆ:3g
とうがらし:0.1g、ごま油:2g
作り方
①ごぼうとにんじんは千切りにして、ごぼうは水にさらしておきます。
②熱したフライパンにサラダ油を入れ、とうがらしを入れ、そこに①を入れて炒めます
③火が通ったら、酒、本みりん、こいくちしょうゆを入れて炒めた後、ごま油を入れて火を止めます。ごま油の風味を残すため、加熱しすぎないようにします。
7-2. 豚肉と野菜のカレー炒め
カレーの風味が効いているので塩分はわずかで済みます。
材料
豚ロース肉:70g、おろししょうが:0.5g、酒:2g、片栗粉:1g、もやし:50g、赤ピーマン;15g、黄ピーマン:15g、サラダ油:3g、本みりん:2g、こいくちしょうゆ:5g、こしょう:0.02g、カレー粉:1g
作り方
①豚肉にしょうがと酒をかけておきます。
②ピーマンはくし型に切り、もやしは洗って水分を切っておきます。
③①の水分を切り、片栗粉と混ぜ合わせます。
④熱したフライパンにサラダ油を入れ、③を炒めます。火が通ったら、もやしとピーマンを加えて炒めます。
⑤本みりん、こいくちしょうゆ、こしょうを入れて軽く炒めます。
⑥カレー粉を入れ、風味を残すようにします。
7-3. さわらの照り焼き(焼きねぎ)
塩分以外の調味料をうまく利用したヘルシーな料理です。
材料
さわら:70g、サラダ油:4g、おろししょうが:1g、酒:2、本みりん:2g、こいくちしょうゆ:4g、長ねぎ:30g、サラダ油:1g
作り方
①さわらに食塩を少量(分量外)かけ、水分を出すことでくさみを少なくして身を締めます。
②さわらの水分と食塩をしっかりと拭きとった後、熱したフライパンにサラダ油を入れて、さわらを焼きます。
③さわらに8割程度火が通ったら、付け合わせの長ねぎをフライパンに入れて一緒に焼きます。
④③に火が通ったらフライパンの油を拭きとり、混ぜ合わせたおろししょうが、酒、本みりん、こいくちしょうゆを入れて表面を焼きます。
7-4. 花蕾のマリネ
塩分控えめ、だけど美味しいレシピです。お弁当のおかずにもピッタリです。
材料
カリフラワー:45g、ブロッコリー:30g、オリーブ油:3g、穀物酢:6g、砂糖:2g、ブラックペッパー:0.03g
作り方
①ブロッコリー、カリフラワーをひと口大に切って茹でる。竹串で刺してかたさを確認する。
②オリーブ油、穀物酢、砂糖を混ぜたものと水分を切った①を和える。
③盛りつけて、ブラックペッパーをふりかける。
7-5. めかじきのアボガドマスタードソテー
タンパク質をたっぷりとれるめかじき使ったレシピです。マスタードで味付けをしているので、塩分をより減らせるのでよいです。
材料
めかじき:70g、料理酒:2g、サラダ油:3g、アボガド:40g、マスタード:6g
作り方
①めかじきに酒をふり、くさみを取ります。
②水分をしっかりと拭きとった後、熱したフライパンにサラダ油を入れて焼きます。
③めかじきに8割程度火が通ったら、スライスしたアボガドを入れて焼きます。
④アボガドに焼き色がつきはじめたら、マスタードを入れて絡めるように炒めます。
7-6.鶏もも肉のソテー(粉ふきいも)
材料
鶏もも肉:70g、酒:2g、サラダ油:3g、食塩:0.5g、こしょう:0.01g、じゃがいも:40g、食塩:0.2g、ドライパセリ:0.03g
作り方
①鶏もも肉に酒をふり、くさみを取ります。
②鶏もも肉の水分をしっかり拭きとった後、熱したフライパンにサラダ油を入れて焼きます。
③焼き目をつけるように火を通し、食塩、こしょうで味を付けます。
まとめ
塩分に関しては、加工食品や外食、コンビニ弁当などが身近にあることもあり、どうしてもとり過ぎになりがちです。
また、味覚は習慣になりやすいため、一度濃い味に慣れてしまうと、なかなかそこから抜け出しづらくなってしまいます。今回ご紹介した、避けるべき食品や量を意識すべき調味料に気をつけ、塩分の少ない食品を選ぶことで健康を維持し、生活習慣病を予防することができると考えます。
参考文献
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平成24年国民健康・栄養調査報告.厚生労働省
BMJ. 1988 Jul 30;297(6644):319-28.
高血圧治療ガイドライン2014. 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会
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日本医事新報. No.4755. 2015. 30-38
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