ご自分の肌質にあったスキンケアが分らずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか?肌質は遺伝的な要因が大きいですが、食事などの生活習慣の影響も受けます。
肌質に合わないスキンケアを行うと、肌が荒れたり、見た目が悪くなったりすることがあります。スキンケアを肌質に合った方法で行うことで美肌になることも可能です。
今回は、3つの基本的な肌質と、それぞれのスキンケアについてお伝えします。ぜひ参考にしてください。
基本的な3つの肌質の分類
実際の基本の肌タイプは3種類あります。
顔、首の大半を見て、全体的にどの肌質に当てはまるかを判断します。
どれにも当てはまらないきれいな肌は「正常肌」ということになります。
世界中で2人として同じ肌はありませんが、この3つの肌質が組み合わさったものを「複合肌・混合肌」と呼ぶことが一般的に多いです。
クリニックなどでは、専用の機械により皮脂や乾燥度、赤みを数値化して測定することができますが、見た目だけでもある程度判断できます。
1.赤ら肌
一般には敏感肌として知られています。
赤みは主に鼻、頬、耳の前およびあごに出やすいです。
赤ら肌には遺伝的な要素もあります。赤ら肌の方は、特定の物質(花粉、粉塵、薬物、化学物質など)に対するアレルギ一反応による過敏症を示すことがあります。
1-1.赤ら肌の見分け方
診断は基本的に色を見て行います。
細かく見ると、毛細血管が拡張していることもありますが、血管が見られないこともあります。
肌が赤い状態が続いたり、斑点があります。
一見きめが細かいように見えますが、加齢がおこりやすいという特徴があります。
冬場は加湿器を使い、乾燥した部屋は避けたほうがよいです。
炎症のある皮膚病変では、表皮の増殖が促進され、未成熟な角層が作られる不全角化と呼ばれる状態になっています。
ラメラ構造と呼ばれる細胞間脂質との層構造の形成も不十分になり、結果的にバリア機能の低下が生じます。
1-2. 赤ら肌のスキンケア
刺激を与えないように香料や着色料を含まないクレンジング剤や化粧水をおすすめします。
刺激の強いスクラブは使わないほうがよいです。
皮膚が薄くなっているため、バリアを除去するα ヒドロキシ酸(AHA)などのピーリング剤を含む化粧品は避けましょう。
直射日光はできるだけ避け、常に日焼け止めを使用してください。
1-3.赤ら肌の治療法
レーザー、フォトフェイシャルにより治療できます。
原理は、皮膚の血管の中にある赤血球に反応させることで血管をつぶさせることです。
治療費用は1万円~数万円程度ですが、治療範囲にもよります。
2.乾燥肌
遺伝的に皮脂(油分)の分泌が少ない肌質です。
皮膚の油分には、皮脂以外にも角層にある細胞間脂質がありますが、これも少なくなることもあります。
小ジワが寄りやすく、加齢が早くおこります。
また、暖房などの人工的な環境に対する抵抗力が低く、熱く焼けるような感覚とかゆみを生じることがあります。
2-1. 乾燥肌の見分け方
見た目はくすんだ印象で、きめが粗くつやがないように見えます。
乾燥肌の肌質は不均一な傾向を示し、毛細血管が浮いて見えることがあります。
皮膚にはシミや色素沈着とが生じていることが多く、強い力が加わると傷つきやすいです。
角層細胞内には、水溶性物質である天然保湿因子(NMF)というものがあります。
これらは様々なアミノ酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)、尿素、無機イオンなどからなります。
NMFは水分を吸収し角層の水分保持に関与しています。
また、角層の細胞間脂質は、角層間において水分子を引き付ける役割があります。
角層と細胞間脂質は、ラメラ構造と呼ばれる層状に分布することで水分を保持しています。
乾燥肌で皮脂の分泌が正常なこともあります。
アトピー性皮膚炎においては、保水力の低下やバリア機能の低下が見られますが、 皮脂分泌量,脂肪酸組成には異常はありません。
そのため、乾燥肌でも脂っぽい肌になることはありえます。
2-2. 乾燥肌のスキンケア
乾燥肌用クレンジング剤と化粧水を使用してください。
さらに特に乾燥している部位のみワセリンを薄く塗ります。
アルコールが入った美容液は乾燥を引き起こすので控えてください。
酸性皮脂膜を維持することが重要なので、刺激の強いスクラブを用いてはいけません。
ケミカルピーリングは控えた方がよいです。
乾燥している部屋では加湿器の使用や飲用による水分補給をしましょう。
皮膚への水分補給や入浴もしすぎると、そのあとに水分が蒸発して余計に乾燥してしまうので気をつけてください。
2-3. 乾燥肌の治療法
皮脂欠乏性皮膚炎(乾皮症)に対して、皮膚科ではワセリンやヒルドイド(ヘパリン類似物質)などの外用薬が処方されています。
また、2%グリセリンとワセリンの塗布が費用対効果で有用であるという報告もあります。
3. 脂性肌
皮脂腺の活動性が高すぎることが原因です。
肌に厚みがあり、Tゾーン全体に聞いた毛穴が特に多く見られます。
脂性肌では化粧の乗りや持ちが悪いことが多いです。
皮脂の分泌には男性ホルモンが関与しています。
3-1. 脂性肌の見分け方
肌色も青ざめて疲れた感じです。
さらに、刺激の強いスキンケアによる発赤も見られます。
ニキビができやすく、ニキビ跡も見られます。
毛穴が開いており、肌全体が厚くなっています。
3-2. 脂性肌のスキンケア
香料や着色料を含まない脂性肌用クレンジング剤と化粧水をお勧めします。
刺激の強いスクラブは、皮脂を落としすぎて、逆に皮脂の分泌を増やしてしまうのでお勧めしません。
直射日光はできるだけ避け、常に日焼け止め剤を用いてください。
「皮膚の水分保持力の測定方法」
見た目でも肌質は判別可能ですが、医療機関では器械を用いるとより客観的に判断できます。
治療を行った際に改善の指標にもなります。例えば、水分蒸散量を測定する器械は皮膚の水分の蒸発しやすさを測定します。
皮膚のバリアが壊れていると、水分が飛んでいきやすく、皮膚に残った水分が減少し乾燥肌になります。
その他、皮脂量や皮膚酸性度、血流、弾力を測定する器械があります。また、ダーモスコープで拡大することでキメの状態を見ることができます。
3-3. 脂性肌の治療法
フォトダイナミックセラピーは、特定の波長の可視光線照射により皮脂腺を直接破壊する治療です。
照射の4時間前にアミノレブリン酸(ALA)を内服します。
これは、天然アミノ酸で体内に入るとポルフィリンという物質に変化し、皮脂腺に集積します。脂腺に集まった細菌に駆除することでニキビにも効果があります。数週間ごとに数回の治療を行います。
1回の治療費は1~5万円程度です。
また、ニキビの治療法には、内服や外用剤による治療があり、これらは保険診療で治療可能です。
また、ケミカルピーリングやフォトフェイシャルもニキビに効果があります。ともに1回の治療費は1万円~数万円程度で1ヶ月に1回くらいの治療が目安です。
「皮脂そのものはバリア機能の役割は果たしません」
表皮の水分保持機能は、皮脂ではなく、角質細胞間脂質によって保たれます。
細胞間脂質はセラミドなどから構成され、化粧品にもセラミドを含むものが販売されています。
脂腺から分泌される脂質は主にトリグリセリド、スクワレン、ワックスエステルなどです。
脂腺は頭、額、鼻付近に多く分泌され、男性ホルモンの影響を受けます。
毛包内部の皮脂腺から分泌される脂質は、もともと硬く流動性の低い脂質ですが、毛包内の常在菌により加水分解され脂肪酸酸とグリセリンに変わり、グリセリンが高い水分保持機能を示します。
ちなみに脂肪酸は臭いの原因となりますが、水溶性ですので皮膚の洗浄により比較的容易に落ちます。
4. 全肌質共通!肌質を改善するために意識しておくべき12の生活習慣
肌質を改善するためには、ご説明してきた通り、しっかりとご自身の肌質を理解すること、肌質に合った正しいスキンケアを行うことが重要です。
ただ、肌質が違うと言っても肌の基本的な構造は共通している部分が多く、基本的には「皮膚のバリアをしっかりと維持すること」が大事です。
ここからは、すべての肌質の方に意識いただきたい生活習慣をご紹介します。
4-1. 長時間のパックや過剰な水分を付けることは避ける
水分を皮膚につけすぎると、それが蒸発した時に水分を奪いすぎて逆に乾燥してしまいます。
パックによる美容成分は、実は皮膚のバリアが存在するためにほとんど入っていきません。
せいぜい保湿成分を皮膚に乗せる程度なのでそれであれば、直接塗った方が手間的にも良いと言えます。
4-2. 美容液・乳液・クリーム類の防腐剤に注意
皮膚には前述の通り、常在菌がいるために弱酸性に保たれています。
パラベンなどの防腐剤は菌のバランスを崩し、乾燥や慢性炎症の原因となります。
4-3.クレンジングのやりすぎや顔の洗いすぎに注意
クレンジングを一生懸命やりすぎることで、細胞間脂質が失われ、バリア機能が破壊されることで皮膚の乾燥が加速します。
皮膚の乾燥はシワの原因となります。
メイクは多少残っていても害はありません。
数日で皮膚の代謝とともに落ちていきますので、多少残すくらいでも問題ありません。
サリチル酸やグリコール酸などの刺激が強い成分を含んだものを長期間使用すると炎症を起したり、乾燥が悪化する可能性があるので気をつけましょう。
「洗顔は弱酸性の洗顔料がおすすめ」
皮膚のpHは、常在菌の影響で弱酸性になっています。
細胞間脂質を損なわない、低刺激性で皮膚のpHにできるだけ近い洗浄剤が理想的です。
4-4.ニキビができた時は早めに治療が最重要
ニキビができた時はつぶしたりしないで、ニキビ用の薬を使用したり、医療機関を受診して下さい。
ニキビが数週間以上経過すると治った後にくぼみが残り、治療は大変になります。
4-5.肌質改善の食事のポイントはビタミンとアミノ酸の摂取し、脂ものを控えること
皮脂の過剰分泌は、ニキビの原因となります。
皮脂は中性脂肪が主成分ですので、食事をコントロールすることが重要です。
炭水化物や脂質・アルコールのとり過ぎは中性脂肪の合成を促進し、皮脂の過剰分泌の原因となります。
ビタミンB2やB6は、脂肪分解や代謝に必要です。
また、脂質の酸化を防ぐビタミンEを食品やサプリメントから多くとるようにするとよいです。
皮膚構造の重要な真皮はコラーゲンでできています。
コラーゲンは加齢や紫外線の影響で年々薄くなり、シワ・たるみの原因となります。
ビタミンA、C、D、ベータカロテンは、コラーゲン生成やコラーゲンを破壊する活性酸素の除去に役立ちます。
また、アミノ酸は肉や魚などのたんぱく質が消化管で分解されたものです。
皮膚のコラーゲンの原料となります。
栄養は食事からしっかりとれるとよいですが、不足している場合はサプリメントからとるという方法もあります。
ビタミンAを多く含む食材・・・うなぎ、レバー、卵黄、牛乳など
ビタミンB2を多く含む食材・・・うなぎ、レバー、いわし、うずら卵など
ビタミンB6を多く含む食材・・・レバー、肉、魚、豆、卵黄など
ビタミンCを多く含む食材・・・イチゴ、赤ピーマン、ブロッコリー、芽キャベツなど
ビタミンDを多く含む食材・・・モロヘイヤ、小松菜、春菊、ニンジンなど
ビタミンEを多く含む食材・・・アーモンド、たらこ、煎茶など
βカロチンを多く含む食材・・・イチゴ、キウイ、ブロッコリー、ピーマンなど
脂肪の中には必須脂肪酸と呼ばれる、体に必要なものもあります。
リノール酸やリノレン酸などの必須脂肪酸はリン脂質を構成し、皮膚のセラミドの原料となります。
食事から必須脂肪酸を効率よくとるには、動物性脂肪,植物性油脂,魚油を4:5:1の割合で摂取することが推奨されています。
コラーゲンをサプリメントからとることは、ほとんど意味がありません。直接皮膚に行くわけではないからです。
最近、プロコラーゲンと呼ばれる形態でコラーゲン摂取をすると多少効果があるという報告がありますが、見た目が改善するほどの効果はありません。
また、皮膚にコラーゲンを塗っても、皮膚のバリアがあるために浸透しません。皮膚に乗せているだけの状態になり、一度洗顔すると全て流出してしまいます。
4-6.サロン・エステのマッサージは肌質改善には無効
マッサージは水分を移動させ、むくみを一時的に取る効果はありますが、肌質そのものを改善させる効果は残念ながらありません。
また、過度なマッサージは皮膚の色素沈着・黒ずみの原因となったり、皮膚が伸びてかえってたるみを起すことがあるので、気をつけましょう。
4-7.高級美容液美容成分を過信しない
角層は、バリア機能があり、分子量500以上のヒアルロン酸、アミノ酸などの大きい物質は透過させません。
特に水溶性で大きな物質は、角層がひび割れた状態以外では皮膚からは透過しません。
脂溶性で低分子の物質は透過に適しています。
4-8. 薄化粧を意識する
化粧品の油分により古い角層がべったりといつまでも張り付いた状態が続くと、代謝が落ち、新しい角層が出てきづらくなります。
また、にきびや吹き出物が生じると、一般的に肌が荒れたと表現されますが、 これらのトラブルは表皮の代謝の不調和によっておこると考えられています。
4-9. 睡眠時間はすごく重要
皮膚は寝ている間に修復されます。
できれば6~7時間程度しっかり寝るようにしましょう。
また睡眠を深くするために、寝る前の数時間はできるだけPCやスマホを見ないようにしましょう。
4-10.ストレス解消は肌質改善に不可欠
心理的ストレスによる皮膚バリア機能の低下あるいはダメージから回復しづらくなることが分っています。
休息やストレス発散も美肌には必要です。
4-11.思春期で皮脂が多い時は十分に洗顔する
皮脂が多すぎると、皮膚の細菌が増殖し、ニキビや皮膚炎の原因となります。
眉毛や小鼻の横は特に皮膚のバリア機能が薄く、また毛穴が大きいため、細菌の死骸が皮膚に浸透して、免疫反応により炎症を起こしやすい場所です。
4-12. 高齢になればなるほど乾燥に注意する
高齢者の皮膚ではセラミドの減少などによる乾燥が見られます。
また、角層の代謝が落ちることで角層層数の増加、つまり角層が厚くなり若者よりもバリア機能はむしろ良くなります。
しかし余分な角層がたまっている分、外気が乾燥している冬場などは角層の表面は乾燥しやすく、ひび割れたり、粉が吹いた状態になりやすいです。
まとめ
ご自分の肌質を知り、それに合ったスキンケアと行うと肌がきれになります。しかし、ご自分の肌質が分かりにくいこともあります。どうしても肌についての問題が解決できない方は、専門の医師にご相談ください。
参考文献
美容のための皮膚診断マニュアル. フレグランスジャーナル社. 2006
トコトンやさしい化粧品の本.日刊工業新聞社.2009
美容皮膚科学.南山堂.2002
Int J Older People Nurs 2017; 1–9